AAR/フレイヤの末裔/カルル帝(後編)
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[[AAR/フレイヤの末裔]]
[[AAR/フレイヤの末裔/カルル王(中編)]]
**幕間「最良の聖地」 [#bf02f0e2]
'''幕に秘された戦車の献じられ、神官のみが触れる事を許さ...
'''我々の信じる限りでは、戦車とその幕、そして女神は秘密...
'''――タキトゥス『ゲルマニア』 40,9'''
968年。西フランク王国、パリ。
&ref(Hrodulf.png);「勇者は勇者を知るものでありますれば、...
ホロズルフは、少々のゲルマン訛りはあるが、流暢なフラン...
&ref(Hrodulf.png);「分割相続は古き因習。ルートヴィヒ1世の...
&ref(Hrodulf.png);「カロリングですらないロタール領の悪王...
&ref(Hrodulf.png);「そうそう、ズビネック王と言えば、ギリ...
&ref(Hrodulf.png);「先の対立教皇の件の直後にこれなのです...
&ref(Hrodulf.png);「ここは、我らノルドにお任せあれ。今度...
ホロズルフは敢えて歯を剥いて笑う。自らに「獰猛なノルド...
'''我ら、&ruby(スカンジナヴィア){暗黒の島};に棲む悪鬼"...
しかし、ギーグは決して、人の真意をその言動だけで判断し...
&ref(Guiges.png);「はっ、何の事もない。奴らが兵を中東に出...
片頬を上げて困った様に笑いながら、ギーグはホロズルフに...
&ref(Hrodulf.png);「はい、剥き身の財宝に目の眩まぬノルド...
ギーグは「くっく」と笑う。
&ref(Guiges.png);「スウェーデンとの停戦期間が手持ち無沙汰...
&ref(Hrodulf.png);「いやはやお恥ずかしい。しかしムンソの...
&ref(Hrodulf.png);「あれはきっと、集めた"勇士"達を持て余...
&ref(Hrodulf.png);「そこを、ギーグ陛下が御救済されれば、...
ホロズルフは大袈裟に両手を広げて見せる。ギーグの様な疑...
&ref(Guiges.png);「何が『ギーグ陛下にとって』だ。つまり、...
&ref(Hrodulf.png);「いやはや、お恥ずかしい」
&ref(Guiges.png);「くっくっく、良い良い。余は貴様らノルド...
&ref(Guiges.png);「しかしロタールの財宝と言うがな、あの地...
&ref(Hrodulf.png);「いえいえ、大きな取り零しが御座いまし...
ギーグの片眉が訝しげに上がる。問う。
&ref(Guiges.png);「……フローニのカルルは何を欲しがっている」
ホロズルフは目を細める。応じる。
&ref(Hrodulf.png);「島を」
&ref(Guiges.png);「ゼーラントか」
&ref(Hrodulf.png);「はい、殊にコリンスプラートの海岸を御...
&ref(Guiges.png);「……あんな僻地に何があるというのだ」
&ref(Hrodulf.png);「さあ、それは私めの様な、いち族長如き...
&ref(Guiges.png);「略奪の拠点か? 余の目と鼻の先で?」
&ref(Hrodulf.png);「いやはや」
数秒の沈黙。ギーグの視線は鋭さを増すが、ホロズルフの笑...
&ref(Guiges.png);「……まあ良い、好きにせよ。それに行儀の悪...
&ref(Hrodulf.png);「流石は陛下、御話が早い。アウストラシ...
&ref(Guiges.png);「ふん」
ギーグはホロズルフの大仰な社交辞令を鼻息一つで払い除け...
「陛下、御耳を……」
大臣の一人が壇下のホロズルフから目を離さぬまま、ギーグ...
&ref(Guiges.png);「くっくっく! ノルドというのはこれだか...
&ref(Guiges.png);「余の具足をもて! 諸侯達に兵と馬を揃え...
&ref(Hrodulf.png);(……もう始まったのか)
確認する。
&ref(Hrodulf.png);「御出陣でありましょうか」
&ref(Guiges.png);「ああ、お前の言った通りだホロズルフ。オ...
&ref(Guiges.png);「それにボヘミアとギリシアが軍をゼーラン...
&ref(Hrodulf.png);「それはそれは……」
&ref(Hrodulf.png);(アスビョルンの動きは予想より少し遅い...
やはり、アスビョルンの軍が南進を開始した様だった。
アスビョルンにはそれしかない。そうせざるを得ないのだか...
&ref(Hrodulf.png);(――ムンソも、運の尽きだな)
ホロズルフはほくそ笑む。そこに、今度はギーグの方が声を...
&ref(Guiges.png);「所でホロズルフ、もう一度訊くのだが、コ...
&ref(Hrodulf.png);「それは私めからは何とも……」
&ref(Guiges.png);「そうか……道中踏み潰さぬ様にしたいかと思...
&ref(Hrodulf.png);「……!?」
ホロズルフの背筋が凍る。
&ref(Hrodulf.png);(測り違えたか……!!)
見誤った、測り違えたのだ、ギーグという男の内に猜疑と実...
あらゆる陰謀を叩き潰す最も効率的な方法、ギーグは暗に、...
&ref(Hrodulf.png);(ボヘミア・ギリシア軍と合流してスカン...
'''真意の明かさぬ者は、何かをする前に殺せば良い。語る口...
ギーグの目が、そう語っているのが解ったのだ。
「御時間です」
大臣が告げる。ギーグは最早ホロズルフを一瞥する事もなく...
&ref(Hrodulf.png);「陛下! ロタールの戦争に、何の名分で...
&ref(Guiges.png);「何を馬鹿馬鹿しい。余はお前とオットーに...
&ref(Guiges.png);「それでノルドを殺して何が悪い」
&ref(Hrodulf.png);「ギーグ!!!!」
ギーグは去った。それでも喚こうと抗うホロズルフを、衛士...
&ref(Hrodulf.png);「ギーグ!! 貴様は呪われろ! ノルド...
* * *
その4年前――964年。デンマーク王国、ホーセンス。
「聖地を取り戻す」……神官達を率い、そう提案するフレイに...
&ref(Karl.png);「聖地……というが、スヴィドヨッドの兵力を如...
それに返答したのは宮廷預言者として神官達を統括する皇太...
&ref(Gyrid.png);「何を気弱な……と言いたい所ですが、現実的...
&ref(Gyrid.png);「……ですから、目指すべきはウプサラではあ...
そこで、ホレイドラの&ruby(ゴディ){神官};・エイナルが進...
その枯れ枝の様な手には、数冊の古書。良く見れば、他の神...
&ref(Hleidra.png);「陛下、我らはリンダ妃御存命の頃はかの...
&ref(Hleidra.png);「それが、何の為か御理解いただけており...
&ref(Karl.png);「……無数に散らばる神話を統合し、神権を一人...
カルル自身も、神々への理解を深めようと書を読み漁った時...
エイナルは、にっか、と笑うと、手許の書束を並べ始めた。
&ref(Hleidra.png);「然り然り。では我々の『古き神々』が、...
&ref(Karl.png);「何……? どういう事だ」
並べた書を一つ取ってはバラバラとめくり、一くさりめくっ...
&ref(Hleidra.png);「ザクセン。嘗て、&ruby(エーシルとヴァ...
&ref(Karl.png);「うむ。カール大帝によって征服され、キリス...
&ref(Hleidra.png);「はい。ふふふ、そうカール大帝に……&ruby...
エイナルは敢えてゲルマン風にカルルの名を発音し、それが...
&ref(Hleidra.png);「失礼失礼……そのカール大帝によるザクセ...
&ref(Hleidra.png);「あのハンマブルクの城砦、『世界の門』...
カルルの脳裏に、父・アンラウフの姿が思い出される。当時...
&ref(Karl.png);「…………話を戻せ。つまり、ザクセンの世界樹を...
エイナルは口を輪にして驚いてみせると、慌てて両手を振っ...
&ref(Hleidra.png);「いえいえいえいえ、パデルボルンは内陸...
&ref(Hleidra.png);「しかし、陛下はやはり御賢明であられま...
&ref(Hleidra.png);「『&ruby(エーシルとヴァニル){我らが神...
神官達が、次々に携えていたものを並べ始める。ローマ字、...
エイナルは、にっか、と笑う。それは、友人を悪戯の共犯に...
&ref(Hleidra.png);「さあ陛下。最良の聖地を、選びましょう...
* * *
再び、968年。中フランク王国、ホランド。
ワデンの浅瀬は深紅に染まっていた。生き残った者達が波に...
トステは斧を担いで膝丈の海をざぶざぶと歩き、それを眺め...
&ref(Toste.png);「おう、ホラーフン。死に損ねたか」
&ref(Hrafn.png);「親父こそだぜ…………」
ホラーフンは鎖帷子の襟を緩めながら答える。余りの疲労感...
一方のトステが50歳を目前にしているとはとても見えない隆...
&ref(Toste.png);「だから鎖帷子はやめとけって言ったろうが...
&ref(Toste.png);「大体お前、死ぬ時ゃ何着てても死ぬんだよ...
トステはゲラゲラと笑う。しかしホラーフンからすれば、父...
両軍共に一万を超える大軍隊同士の血戦だ。その直中、トス...
キリスト教徒達に「人喰いトステ」と呼ばわれて恐れられる...
&ref(Toste.png);「ま、生き残ったって事はツいてんだろう。...
&ref(Hrafn.png);「あいさ。一先ず敵軍は撤退。追撃隊からは...
&ref(Hrafn.png);「こっちの被害は約2500。&ruby(ハスカール)...
&ref(Toste.png);「良いね良いねえ、良い傾向だねえ。こりゃ...
&ref(Hrafn.png);「敵の残党は約2000。別働でゼーラント解放...
&ref(Toste.png);「いや、いい……それより、"それっぽいもの"...
&ref(Hrafn.png);「勘弁してくれよ親父、ワデンが遠浅の海と...
トステは両肩を竦めて笑う。今度の笑いは「ひっひ」と皮肉...
&ref(Toste.png);「違いねえ。ったく、俺らの大将も無茶を仰...
ポメラニアに続いてここでの大勝、ノルドは戦いにおいてキ...
……が、その時、トステは妙な感触を覚えた。痒い。小棘が刺...
&ref(Toste.png);(ン……?)
&ref(Hrafn.png);「あ……」
ホラーフンの顔が蒼褪めている。「どうした?」と訊く前に...
&ref(Hrafn.png);「伏せろおおおおおおおおおおおおお!!!...
&ref(Toste.png);「どわっ!!」
ホラーフンは絶叫と共に虫船を飛び移り、トステを押し倒し...
''「ぎやあああ!!」「ぐええッ」「な、何で西から!!!...
ホラーフンの肩越しに辛うじて確保された視界からみえたの...
''「あ、ありゃあ西フランク軍じゃ!?」「うぐへぇえ」「...
その雨に降られた者が次々に斃れ、ワデン海の紅を更に深め...
何十秒経ったろうか。最初の準備射撃が、終わる。
&ref(Toste.png);「あー…………撃たれたのか」
&ref(Hrafn.png);「に、西フランク……ギーグ王の軍……ッ、何で…...
&ref(Toste.png);「そりゃ解らんが……その、何だ」
&ref(Toste.png);「ホラーフンよお、だから言ったろうが……死...
ホラーフンの背に、鎖帷子を貫いて無数の棒が生えていた。...
&ref(Hrafn.png);「……ははっ、俺の葬船は鉄で造ってくれよ……...
&ref(Toste.png);「…………いいぜ」
宣戦も躊躇もなく強かに射掛けた新たな敵軍は、ベーフェラ...
&ref(Toste.png);「生き残れたらな」
トステの周りでは矢の雨をやり過ごした兵達が武器を盾を構...
&ref(Toste.png);「駿馬に走らせて追撃隊に散ってる奴らに状...
&ref(Toste.png);「ついでと言っちゃあなんだが、さっきの射...
一射目の観測が終わったのか、敵軍の空気がキリリと軋む。...
&ref(Toste.png);''「――&ruby(クライ){叫喚};!!」''
海を震わせ、地を響もして、ノルドの咆哮が鳴り渡る。戦の...
&ref(Toste.png);''「&ruby(ハヴォック){吶喊};!!!!」''
*カルル帝(後編)1.27.965~ [#re6ad3ea]
**変わり行く東方 [#q704ae7b]
話を少しだけ東方に移そう。
&ref(ホルムガルド.png);
この頃のホルムガルドとその王、ホルズガル。
カルル帝がヨムス・ヴァイキングのポメラニア征服から兵を...
ホルムガルドの特使、と言っても、スラヴ化したリューリク...
&ref(ホルムガルドの反乱.png);
今度はホルムガルド内で、ルキ氏族のフラディスラフを中心...
リューリク家はカルル帝と同様にヨムス・ヴァイキングの侵...
この後、ホルムガルド内のフローニ氏族達も次々に決起して...
一方、その南方で成立していたルテニア王国は比較的安定し...
&ref(オレグ.png); &ref(ルテニア.png);
ルテニア王国と"肥満王"オレグ。
というのも、上記の史料は974年頃のものだが、ルテニア王・...
ルテニアの王都はキエフであり、その前身は"異人の"デュレ...
ホルムガルドのノルドがカルル帝の支配を求めたのも、ルテ...
カルル帝とスカンジナヴィア族長達は東方の様相を一旦静観...
**ネヘレニア戦争 [#e63b009d]
先ず、この頃の西欧一帯の地図を確認しよう。
&ref(フランク.png);
東フランクの西進によって中フランクとイタリアが両断され...
これらフランク系の国家は何れもカロリング朝の版図であっ...
&ref(ズビネック.png);
ズビネック悪王。武力と陰謀を恃む野心的な人物で知られる。...
&ref(ワデン海.png);
965年、5月末。スカンジナヴィア帝国は艦隊約40隻に、ユー...
そして宣戦布告と同時に、ゼーラントに上陸したのである。
&ref(Karl.png);「古き神々を畏れぬ悪王・ズビネックよ、その...
&ref(Karl.png);「その地が嘗て、何と言う名で知られていたの...
&ref(Karl.png);「知らぬままで良い、知る必要もない。何も解...
&ref(Karl.png);「これは正式な宣戦布告である。手向かうなら...
ズビネック王にとって、この宣戦布告は寝耳に水であっただ...
しかし、カルル帝が急いでいたのは拡張ではなく、ウプサラ...
ノルド聖典は、カルル帝が夢の中で神々に啓示を授けられ、...
&ref(ノルド宗教の状態.png);
ノルドは海を渡る略奪者として恐れられた。&ruby(ドラゴン...
ノルドの船は喫水が浅く、&ruby(スネッケ){虫船};と呼ばれ...
特にビザンツやアラブでは良質な文献資料が多く残されてお...
元来、ノルド人は信仰の根拠を自らの氏族に持ち、強く土地...
その結果、見出されたのがゼーラント……いや、『ガヌエンタ...
ガヌエンタは古代ローマ時代に存在していた貿易都市で、コ...
この街では嘗てネヘレニアと呼ばれる海の女神がゲルマン人...
後に「ネヘレニア戦争」と呼ばれるこの戦いは、聖地として...
しかし「ガヌエンタ」が聖地として選ばれた理由は、何もネ...
&ref(ルクセンブルク.png);
ズビネック王はこの頃、アゼルバイジャンを求めて侵攻する...
ともかく、先ずは艦隊から上陸した常備軍4000名、それに陸...
&ref(ヴラールディンゲンの戦い.png); &ref(エグモンドの戦...
10500対12000、数ではスカンジナヴィアが不利だったが、練...
ゼーラント割譲を強要可能な所まであと一息、と思われたそ...
余程の混乱だったのか、状況を推し量る詳しい史料は残って...
ともかく、スカンジナヴィア軍は奇襲を受けながらも何とか...
ヴラーディンゲンの戦い以上の員数差に徐々に圧倒されるス...
&ref(ギーグ王、戦死.png);
トステを中心とした&ruby(ハスカール){重装歩兵};の特選部...
&ref(撤退んぐ.png);
王の首を掲げて勝鬨を上げるヴァイキング達の姿に、西フラ...
残されたビザンツ・ボヘミア軍は員数を3000を割っており、...
10500の軍で、都合20000以上の敵軍を退けたこの奇跡的勝利...
&ref(ゼーラント獲得.png);
この戦いの後、間もなくズビネック王は割譲を承認。ゼーラ...
トーレンの司教は教権の不可侵によって聖堂に残っていたが...
そして彼に代わってトーレンに叙任されたのは、「トーレン...
&ref(トーレンのリンダ.png);
トーレンのリンダ。その熱狂的とも言える信仰心を買われ、ガ...
つまり、帝室からの神官叙任である。如何にスカンジナヴィ...
&ref(Tlinda.png);「幾百年の波に洗われるとも、真に神聖なる...
&ref(Tlinda.png);「エーシルとヴァニルの争いで始まった永き...
&ref(Tlinda.png);「女神を、ネヘレニアを、お救い申し上げる...
そうして、「発掘」と「略奪」が始まった。大陸にゼーラン...
また、丁度この頃にブリテン島のトティルがサフォークの征...
&ref(トティルがんばった.png); &ref(ブリテンノルド.png);
一時はヨルヴィク以外の版図を喪失していたブリテン島のノル...
折りしも時は10世紀の後半、最初の千年紀の終わりが近付い...
ノルドは、キリスト教徒にとって「終末」の恐怖の象徴とな...
そして――
**幕間「&ruby(フィルキル){盟主};」 [#f80972f0]
『それ』は、余りにも素朴な聖像だった。
女神の移し身は犬を伴って&ruby(ホフ){聖なる館};の内側に...
往時には施されていたであろうあらゆる彩色と装飾は失われ...
だが、これがただの像であれば、こうしてノルドの目を集め...
これが単なる略奪物であれば、海底の砂となるまで省みられ...
それは紛れも無く聖なるものだった。定命の者には超えられ...
&ref(Karl.png);「……」
カルルは一歩一歩に引き摺る様な重さを感じながら、女神に...
&ref(Karl.png);「……」
カルルが拝跪する。居並ぶ族長達が、それを凝視する。
&ref(Karl.png);「……」
カルルが、女神に手を伸ばす。触れた。
&ref(Karl.png);「…………!」
雷鳴。寺院の外は晴天であるのに、それは地響きを伴う大音...
しかし、それにどよめく者は誰もいなかった。それは、世界...
&ref(Freyja.png);(…………合格よ、カルル)
&ruby(フレイヤ){女神};の、声がする。
&ref(Freyja.png);(ノルド達が古き神々を忘れ去って、悲劇の...
&ref(Freyja.png);(私は、それを回避する為に何度も歴史の始...
&ref(Freyja.png);(……ここまで辿り着けたのは、貴方が最初。...
&ref(Freyja.png);(だから、ご褒美に約束を果たしてあげる)
&ref(Freyja.png);(そのまま、目を瞑りなさい。後の事は息子...
女神の言葉を聴きながら、カルルは立ち上がる。その視線の...
ぞっとする程、美しい少女だ。その瞳は溢れる才気と野心で...
&ref(Inga.png);「……」
今や、彼女の美しさこそ、カルルにとっての現実だった。
リンダに焦がれる余りに視るセスルームニルの夢や、こんな...
それは、死後の楽しみで十分だった。
&ref(Karl.png);(悪いな、婆さん。リンダにはもう少し待たせ...
&ref(Karl.png);(俺にはこっちで済ませなきゃいけない事が、...
フレイヤの幻影は溜息を一つ残して、それきり消えてしまっ...
カルルには、生きる理由ができていたから。
カルルは目を瞠く。両腕を広げる。宣言する。
&ref(Karl.png);「……盟約を果たそう」
&ref(Karl.png);「&ruby(フィルケ){我が民};よ、百年の嘗てに...
そこで、一人の男が前に出た。
&ref(HraneJ.png);「&ruby(ケーザリ){皇帝};、フローニのカル...
彼の後ろには&ruby(ヨムス・ヴァイキング){ヨームの戦士団}...
&ref(HraneJ.png);「……我らは報われた。オーディン、トール、...
インリングが、ヨムス・ヴァイキングが、フローニに膝をつ...
&ref(HraneJ.png);''「歓呼せよ!!!!」''
'''「&ruby(フィルキル){盟主};……」'''
'''「&ruby(フィルキル){盟主};よ……」'''
'''「我らが&ruby(フィルキル){盟主};よ!!」'''
'''「全てのノルドの&ruby(フィルキル){盟主};よ!」'''
ノルド達が歓呼する。
'''「&ruby(フィルキル){盟主};!!」「&ruby(フィルキル){...
スカンディア全てを包む歓声が、ノルドの勝利を、そしてこ...
&ref(Karl.png);''「応じよう! 我はフローニのカルル!! ...
&ref(Karl.png);''「スカンディアの王冠を束ねる&ruby(ケーザ...
**&ruby(フィルキレート・ノルド){盟約のノルド}; [#ce3f270c]
969年6月19日。
&ref(よむよむ.png); &ref(革新!.png); &ref(革新んぐ.png);
コリンスプラート海岸の海中から発掘されたネヘレニアの聖...
これが、カルル帝最大の偉業として讃えられる''"&ruby(フィ...
これ以降、ノルド世界の階級構造はより封建的に再構成され...
&ref(盟主カルル.png);
また、この前後に氏族の忠労を讃えて、フィンランド王冠は...
|[[AAR/フレイヤの末裔/盟主カルル(完結編)]]に続く。|
終了行:
[[AAR/フレイヤの末裔]]
[[AAR/フレイヤの末裔/カルル王(中編)]]
**幕間「最良の聖地」 [#bf02f0e2]
'''幕に秘された戦車の献じられ、神官のみが触れる事を許さ...
'''我々の信じる限りでは、戦車とその幕、そして女神は秘密...
'''――タキトゥス『ゲルマニア』 40,9'''
968年。西フランク王国、パリ。
&ref(Hrodulf.png);「勇者は勇者を知るものでありますれば、...
ホロズルフは、少々のゲルマン訛りはあるが、流暢なフラン...
&ref(Hrodulf.png);「分割相続は古き因習。ルートヴィヒ1世の...
&ref(Hrodulf.png);「カロリングですらないロタール領の悪王...
&ref(Hrodulf.png);「そうそう、ズビネック王と言えば、ギリ...
&ref(Hrodulf.png);「先の対立教皇の件の直後にこれなのです...
&ref(Hrodulf.png);「ここは、我らノルドにお任せあれ。今度...
ホロズルフは敢えて歯を剥いて笑う。自らに「獰猛なノルド...
'''我ら、&ruby(スカンジナヴィア){暗黒の島};に棲む悪鬼"...
しかし、ギーグは決して、人の真意をその言動だけで判断し...
&ref(Guiges.png);「はっ、何の事もない。奴らが兵を中東に出...
片頬を上げて困った様に笑いながら、ギーグはホロズルフに...
&ref(Hrodulf.png);「はい、剥き身の財宝に目の眩まぬノルド...
ギーグは「くっく」と笑う。
&ref(Guiges.png);「スウェーデンとの停戦期間が手持ち無沙汰...
&ref(Hrodulf.png);「いやはやお恥ずかしい。しかしムンソの...
&ref(Hrodulf.png);「あれはきっと、集めた"勇士"達を持て余...
&ref(Hrodulf.png);「そこを、ギーグ陛下が御救済されれば、...
ホロズルフは大袈裟に両手を広げて見せる。ギーグの様な疑...
&ref(Guiges.png);「何が『ギーグ陛下にとって』だ。つまり、...
&ref(Hrodulf.png);「いやはや、お恥ずかしい」
&ref(Guiges.png);「くっくっく、良い良い。余は貴様らノルド...
&ref(Guiges.png);「しかしロタールの財宝と言うがな、あの地...
&ref(Hrodulf.png);「いえいえ、大きな取り零しが御座いまし...
ギーグの片眉が訝しげに上がる。問う。
&ref(Guiges.png);「……フローニのカルルは何を欲しがっている」
ホロズルフは目を細める。応じる。
&ref(Hrodulf.png);「島を」
&ref(Guiges.png);「ゼーラントか」
&ref(Hrodulf.png);「はい、殊にコリンスプラートの海岸を御...
&ref(Guiges.png);「……あんな僻地に何があるというのだ」
&ref(Hrodulf.png);「さあ、それは私めの様な、いち族長如き...
&ref(Guiges.png);「略奪の拠点か? 余の目と鼻の先で?」
&ref(Hrodulf.png);「いやはや」
数秒の沈黙。ギーグの視線は鋭さを増すが、ホロズルフの笑...
&ref(Guiges.png);「……まあ良い、好きにせよ。それに行儀の悪...
&ref(Hrodulf.png);「流石は陛下、御話が早い。アウストラシ...
&ref(Guiges.png);「ふん」
ギーグはホロズルフの大仰な社交辞令を鼻息一つで払い除け...
「陛下、御耳を……」
大臣の一人が壇下のホロズルフから目を離さぬまま、ギーグ...
&ref(Guiges.png);「くっくっく! ノルドというのはこれだか...
&ref(Guiges.png);「余の具足をもて! 諸侯達に兵と馬を揃え...
&ref(Hrodulf.png);(……もう始まったのか)
確認する。
&ref(Hrodulf.png);「御出陣でありましょうか」
&ref(Guiges.png);「ああ、お前の言った通りだホロズルフ。オ...
&ref(Guiges.png);「それにボヘミアとギリシアが軍をゼーラン...
&ref(Hrodulf.png);「それはそれは……」
&ref(Hrodulf.png);(アスビョルンの動きは予想より少し遅い...
やはり、アスビョルンの軍が南進を開始した様だった。
アスビョルンにはそれしかない。そうせざるを得ないのだか...
&ref(Hrodulf.png);(――ムンソも、運の尽きだな)
ホロズルフはほくそ笑む。そこに、今度はギーグの方が声を...
&ref(Guiges.png);「所でホロズルフ、もう一度訊くのだが、コ...
&ref(Hrodulf.png);「それは私めからは何とも……」
&ref(Guiges.png);「そうか……道中踏み潰さぬ様にしたいかと思...
&ref(Hrodulf.png);「……!?」
ホロズルフの背筋が凍る。
&ref(Hrodulf.png);(測り違えたか……!!)
見誤った、測り違えたのだ、ギーグという男の内に猜疑と実...
あらゆる陰謀を叩き潰す最も効率的な方法、ギーグは暗に、...
&ref(Hrodulf.png);(ボヘミア・ギリシア軍と合流してスカン...
'''真意の明かさぬ者は、何かをする前に殺せば良い。語る口...
ギーグの目が、そう語っているのが解ったのだ。
「御時間です」
大臣が告げる。ギーグは最早ホロズルフを一瞥する事もなく...
&ref(Hrodulf.png);「陛下! ロタールの戦争に、何の名分で...
&ref(Guiges.png);「何を馬鹿馬鹿しい。余はお前とオットーに...
&ref(Guiges.png);「それでノルドを殺して何が悪い」
&ref(Hrodulf.png);「ギーグ!!!!」
ギーグは去った。それでも喚こうと抗うホロズルフを、衛士...
&ref(Hrodulf.png);「ギーグ!! 貴様は呪われろ! ノルド...
* * *
その4年前――964年。デンマーク王国、ホーセンス。
「聖地を取り戻す」……神官達を率い、そう提案するフレイに...
&ref(Karl.png);「聖地……というが、スヴィドヨッドの兵力を如...
それに返答したのは宮廷預言者として神官達を統括する皇太...
&ref(Gyrid.png);「何を気弱な……と言いたい所ですが、現実的...
&ref(Gyrid.png);「……ですから、目指すべきはウプサラではあ...
そこで、ホレイドラの&ruby(ゴディ){神官};・エイナルが進...
その枯れ枝の様な手には、数冊の古書。良く見れば、他の神...
&ref(Hleidra.png);「陛下、我らはリンダ妃御存命の頃はかの...
&ref(Hleidra.png);「それが、何の為か御理解いただけており...
&ref(Karl.png);「……無数に散らばる神話を統合し、神権を一人...
カルル自身も、神々への理解を深めようと書を読み漁った時...
エイナルは、にっか、と笑うと、手許の書束を並べ始めた。
&ref(Hleidra.png);「然り然り。では我々の『古き神々』が、...
&ref(Karl.png);「何……? どういう事だ」
並べた書を一つ取ってはバラバラとめくり、一くさりめくっ...
&ref(Hleidra.png);「ザクセン。嘗て、&ruby(エーシルとヴァ...
&ref(Karl.png);「うむ。カール大帝によって征服され、キリス...
&ref(Hleidra.png);「はい。ふふふ、そうカール大帝に……&ruby...
エイナルは敢えてゲルマン風にカルルの名を発音し、それが...
&ref(Hleidra.png);「失礼失礼……そのカール大帝によるザクセ...
&ref(Hleidra.png);「あのハンマブルクの城砦、『世界の門』...
カルルの脳裏に、父・アンラウフの姿が思い出される。当時...
&ref(Karl.png);「…………話を戻せ。つまり、ザクセンの世界樹を...
エイナルは口を輪にして驚いてみせると、慌てて両手を振っ...
&ref(Hleidra.png);「いえいえいえいえ、パデルボルンは内陸...
&ref(Hleidra.png);「しかし、陛下はやはり御賢明であられま...
&ref(Hleidra.png);「『&ruby(エーシルとヴァニル){我らが神...
神官達が、次々に携えていたものを並べ始める。ローマ字、...
エイナルは、にっか、と笑う。それは、友人を悪戯の共犯に...
&ref(Hleidra.png);「さあ陛下。最良の聖地を、選びましょう...
* * *
再び、968年。中フランク王国、ホランド。
ワデンの浅瀬は深紅に染まっていた。生き残った者達が波に...
トステは斧を担いで膝丈の海をざぶざぶと歩き、それを眺め...
&ref(Toste.png);「おう、ホラーフン。死に損ねたか」
&ref(Hrafn.png);「親父こそだぜ…………」
ホラーフンは鎖帷子の襟を緩めながら答える。余りの疲労感...
一方のトステが50歳を目前にしているとはとても見えない隆...
&ref(Toste.png);「だから鎖帷子はやめとけって言ったろうが...
&ref(Toste.png);「大体お前、死ぬ時ゃ何着てても死ぬんだよ...
トステはゲラゲラと笑う。しかしホラーフンからすれば、父...
両軍共に一万を超える大軍隊同士の血戦だ。その直中、トス...
キリスト教徒達に「人喰いトステ」と呼ばわれて恐れられる...
&ref(Toste.png);「ま、生き残ったって事はツいてんだろう。...
&ref(Hrafn.png);「あいさ。一先ず敵軍は撤退。追撃隊からは...
&ref(Hrafn.png);「こっちの被害は約2500。&ruby(ハスカール)...
&ref(Toste.png);「良いね良いねえ、良い傾向だねえ。こりゃ...
&ref(Hrafn.png);「敵の残党は約2000。別働でゼーラント解放...
&ref(Toste.png);「いや、いい……それより、"それっぽいもの"...
&ref(Hrafn.png);「勘弁してくれよ親父、ワデンが遠浅の海と...
トステは両肩を竦めて笑う。今度の笑いは「ひっひ」と皮肉...
&ref(Toste.png);「違いねえ。ったく、俺らの大将も無茶を仰...
ポメラニアに続いてここでの大勝、ノルドは戦いにおいてキ...
……が、その時、トステは妙な感触を覚えた。痒い。小棘が刺...
&ref(Toste.png);(ン……?)
&ref(Hrafn.png);「あ……」
ホラーフンの顔が蒼褪めている。「どうした?」と訊く前に...
&ref(Hrafn.png);「伏せろおおおおおおおおおおおおお!!!...
&ref(Toste.png);「どわっ!!」
ホラーフンは絶叫と共に虫船を飛び移り、トステを押し倒し...
''「ぎやあああ!!」「ぐええッ」「な、何で西から!!!...
ホラーフンの肩越しに辛うじて確保された視界からみえたの...
''「あ、ありゃあ西フランク軍じゃ!?」「うぐへぇえ」「...
その雨に降られた者が次々に斃れ、ワデン海の紅を更に深め...
何十秒経ったろうか。最初の準備射撃が、終わる。
&ref(Toste.png);「あー…………撃たれたのか」
&ref(Hrafn.png);「に、西フランク……ギーグ王の軍……ッ、何で…...
&ref(Toste.png);「そりゃ解らんが……その、何だ」
&ref(Toste.png);「ホラーフンよお、だから言ったろうが……死...
ホラーフンの背に、鎖帷子を貫いて無数の棒が生えていた。...
&ref(Hrafn.png);「……ははっ、俺の葬船は鉄で造ってくれよ……...
&ref(Toste.png);「…………いいぜ」
宣戦も躊躇もなく強かに射掛けた新たな敵軍は、ベーフェラ...
&ref(Toste.png);「生き残れたらな」
トステの周りでは矢の雨をやり過ごした兵達が武器を盾を構...
&ref(Toste.png);「駿馬に走らせて追撃隊に散ってる奴らに状...
&ref(Toste.png);「ついでと言っちゃあなんだが、さっきの射...
一射目の観測が終わったのか、敵軍の空気がキリリと軋む。...
&ref(Toste.png);''「――&ruby(クライ){叫喚};!!」''
海を震わせ、地を響もして、ノルドの咆哮が鳴り渡る。戦の...
&ref(Toste.png);''「&ruby(ハヴォック){吶喊};!!!!」''
*カルル帝(後編)1.27.965~ [#re6ad3ea]
**変わり行く東方 [#q704ae7b]
話を少しだけ東方に移そう。
&ref(ホルムガルド.png);
この頃のホルムガルドとその王、ホルズガル。
カルル帝がヨムス・ヴァイキングのポメラニア征服から兵を...
ホルムガルドの特使、と言っても、スラヴ化したリューリク...
&ref(ホルムガルドの反乱.png);
今度はホルムガルド内で、ルキ氏族のフラディスラフを中心...
リューリク家はカルル帝と同様にヨムス・ヴァイキングの侵...
この後、ホルムガルド内のフローニ氏族達も次々に決起して...
一方、その南方で成立していたルテニア王国は比較的安定し...
&ref(オレグ.png); &ref(ルテニア.png);
ルテニア王国と"肥満王"オレグ。
というのも、上記の史料は974年頃のものだが、ルテニア王・...
ルテニアの王都はキエフであり、その前身は"異人の"デュレ...
ホルムガルドのノルドがカルル帝の支配を求めたのも、ルテ...
カルル帝とスカンジナヴィア族長達は東方の様相を一旦静観...
**ネヘレニア戦争 [#e63b009d]
先ず、この頃の西欧一帯の地図を確認しよう。
&ref(フランク.png);
東フランクの西進によって中フランクとイタリアが両断され...
これらフランク系の国家は何れもカロリング朝の版図であっ...
&ref(ズビネック.png);
ズビネック悪王。武力と陰謀を恃む野心的な人物で知られる。...
&ref(ワデン海.png);
965年、5月末。スカンジナヴィア帝国は艦隊約40隻に、ユー...
そして宣戦布告と同時に、ゼーラントに上陸したのである。
&ref(Karl.png);「古き神々を畏れぬ悪王・ズビネックよ、その...
&ref(Karl.png);「その地が嘗て、何と言う名で知られていたの...
&ref(Karl.png);「知らぬままで良い、知る必要もない。何も解...
&ref(Karl.png);「これは正式な宣戦布告である。手向かうなら...
ズビネック王にとって、この宣戦布告は寝耳に水であっただ...
しかし、カルル帝が急いでいたのは拡張ではなく、ウプサラ...
ノルド聖典は、カルル帝が夢の中で神々に啓示を授けられ、...
&ref(ノルド宗教の状態.png);
ノルドは海を渡る略奪者として恐れられた。&ruby(ドラゴン...
ノルドの船は喫水が浅く、&ruby(スネッケ){虫船};と呼ばれ...
特にビザンツやアラブでは良質な文献資料が多く残されてお...
元来、ノルド人は信仰の根拠を自らの氏族に持ち、強く土地...
その結果、見出されたのがゼーラント……いや、『ガヌエンタ...
ガヌエンタは古代ローマ時代に存在していた貿易都市で、コ...
この街では嘗てネヘレニアと呼ばれる海の女神がゲルマン人...
後に「ネヘレニア戦争」と呼ばれるこの戦いは、聖地として...
しかし「ガヌエンタ」が聖地として選ばれた理由は、何もネ...
&ref(ルクセンブルク.png);
ズビネック王はこの頃、アゼルバイジャンを求めて侵攻する...
ともかく、先ずは艦隊から上陸した常備軍4000名、それに陸...
&ref(ヴラールディンゲンの戦い.png); &ref(エグモンドの戦...
10500対12000、数ではスカンジナヴィアが不利だったが、練...
ゼーラント割譲を強要可能な所まであと一息、と思われたそ...
余程の混乱だったのか、状況を推し量る詳しい史料は残って...
ともかく、スカンジナヴィア軍は奇襲を受けながらも何とか...
ヴラーディンゲンの戦い以上の員数差に徐々に圧倒されるス...
&ref(ギーグ王、戦死.png);
トステを中心とした&ruby(ハスカール){重装歩兵};の特選部...
&ref(撤退んぐ.png);
王の首を掲げて勝鬨を上げるヴァイキング達の姿に、西フラ...
残されたビザンツ・ボヘミア軍は員数を3000を割っており、...
10500の軍で、都合20000以上の敵軍を退けたこの奇跡的勝利...
&ref(ゼーラント獲得.png);
この戦いの後、間もなくズビネック王は割譲を承認。ゼーラ...
トーレンの司教は教権の不可侵によって聖堂に残っていたが...
そして彼に代わってトーレンに叙任されたのは、「トーレン...
&ref(トーレンのリンダ.png);
トーレンのリンダ。その熱狂的とも言える信仰心を買われ、ガ...
つまり、帝室からの神官叙任である。如何にスカンジナヴィ...
&ref(Tlinda.png);「幾百年の波に洗われるとも、真に神聖なる...
&ref(Tlinda.png);「エーシルとヴァニルの争いで始まった永き...
&ref(Tlinda.png);「女神を、ネヘレニアを、お救い申し上げる...
そうして、「発掘」と「略奪」が始まった。大陸にゼーラン...
また、丁度この頃にブリテン島のトティルがサフォークの征...
&ref(トティルがんばった.png); &ref(ブリテンノルド.png);
一時はヨルヴィク以外の版図を喪失していたブリテン島のノル...
折りしも時は10世紀の後半、最初の千年紀の終わりが近付い...
ノルドは、キリスト教徒にとって「終末」の恐怖の象徴とな...
そして――
**幕間「&ruby(フィルキル){盟主};」 [#f80972f0]
『それ』は、余りにも素朴な聖像だった。
女神の移し身は犬を伴って&ruby(ホフ){聖なる館};の内側に...
往時には施されていたであろうあらゆる彩色と装飾は失われ...
だが、これがただの像であれば、こうしてノルドの目を集め...
これが単なる略奪物であれば、海底の砂となるまで省みられ...
それは紛れも無く聖なるものだった。定命の者には超えられ...
&ref(Karl.png);「……」
カルルは一歩一歩に引き摺る様な重さを感じながら、女神に...
&ref(Karl.png);「……」
カルルが拝跪する。居並ぶ族長達が、それを凝視する。
&ref(Karl.png);「……」
カルルが、女神に手を伸ばす。触れた。
&ref(Karl.png);「…………!」
雷鳴。寺院の外は晴天であるのに、それは地響きを伴う大音...
しかし、それにどよめく者は誰もいなかった。それは、世界...
&ref(Freyja.png);(…………合格よ、カルル)
&ruby(フレイヤ){女神};の、声がする。
&ref(Freyja.png);(ノルド達が古き神々を忘れ去って、悲劇の...
&ref(Freyja.png);(私は、それを回避する為に何度も歴史の始...
&ref(Freyja.png);(……ここまで辿り着けたのは、貴方が最初。...
&ref(Freyja.png);(だから、ご褒美に約束を果たしてあげる)
&ref(Freyja.png);(そのまま、目を瞑りなさい。後の事は息子...
女神の言葉を聴きながら、カルルは立ち上がる。その視線の...
ぞっとする程、美しい少女だ。その瞳は溢れる才気と野心で...
&ref(Inga.png);「……」
今や、彼女の美しさこそ、カルルにとっての現実だった。
リンダに焦がれる余りに視るセスルームニルの夢や、こんな...
それは、死後の楽しみで十分だった。
&ref(Karl.png);(悪いな、婆さん。リンダにはもう少し待たせ...
&ref(Karl.png);(俺にはこっちで済ませなきゃいけない事が、...
フレイヤの幻影は溜息を一つ残して、それきり消えてしまっ...
カルルには、生きる理由ができていたから。
カルルは目を瞠く。両腕を広げる。宣言する。
&ref(Karl.png);「……盟約を果たそう」
&ref(Karl.png);「&ruby(フィルケ){我が民};よ、百年の嘗てに...
そこで、一人の男が前に出た。
&ref(HraneJ.png);「&ruby(ケーザリ){皇帝};、フローニのカル...
彼の後ろには&ruby(ヨムス・ヴァイキング){ヨームの戦士団}...
&ref(HraneJ.png);「……我らは報われた。オーディン、トール、...
インリングが、ヨムス・ヴァイキングが、フローニに膝をつ...
&ref(HraneJ.png);''「歓呼せよ!!!!」''
'''「&ruby(フィルキル){盟主};……」'''
'''「&ruby(フィルキル){盟主};よ……」'''
'''「我らが&ruby(フィルキル){盟主};よ!!」'''
'''「全てのノルドの&ruby(フィルキル){盟主};よ!」'''
ノルド達が歓呼する。
'''「&ruby(フィルキル){盟主};!!」「&ruby(フィルキル){...
スカンディア全てを包む歓声が、ノルドの勝利を、そしてこ...
&ref(Karl.png);''「応じよう! 我はフローニのカルル!! ...
&ref(Karl.png);''「スカンディアの王冠を束ねる&ruby(ケーザ...
**&ruby(フィルキレート・ノルド){盟約のノルド}; [#ce3f270c]
969年6月19日。
&ref(よむよむ.png); &ref(革新!.png); &ref(革新んぐ.png);
コリンスプラート海岸の海中から発掘されたネヘレニアの聖...
これが、カルル帝最大の偉業として讃えられる''"&ruby(フィ...
これ以降、ノルド世界の階級構造はより封建的に再構成され...
&ref(盟主カルル.png);
また、この前後に氏族の忠労を讃えて、フィンランド王冠は...
|[[AAR/フレイヤの末裔/盟主カルル(完結編)]]に続く。|
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