AAR/フレイヤの末裔/アンラウフ王(中編)
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[[AAR/フレイヤの末裔]]
[[AAR/フレイヤの末裔/アンラウフ王(前編)]]
**幕間「地球の力尽きて終わる場所」 [#m8ca0abe]
'''その海岸は荒れ狂う海洋の波浪に洗われ'''
'''その末端は(スウェーデンと)同じくリフェ山地となり'''
'''そこで地球は力尽きて終わる'''
'''――『ハンブルク教会史』第四部『北欧諸島誌』'''
&ref(Klasアイコン.png);「申し上げます」
クラスは務めていつも通りに、威勢良く述べる。
&ref(Klasアイコン.png);「我がデンマーク軍はケント王国を中...
&ref(Klasアイコン.png);「アングル人どもはノルド人の恐ろし...
&ref(Klasアイコン.png);「南方諸島王国が版図を失したはこの...
&ref(Klasアイコン.png);「シグトリュグ陛下にあっては、この...
&ref(Klasアイコン.png);「然らば、これ以上の助勢は却って彼...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);「よくもまあそれだけ口が回るも...
&ref(Klasアイコン.png);「は?」
アンラウフは肥えた身体を玉座に預け、白い頬の肉を皮肉げ...
面々には、クラスの語る「戦勝」の喜びには程遠い、歯痒さ...
アンラウフの成人祝いを兼ねた凱旋式はクラスの指示で殊更...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);「独り言だ、続けよ」
&ref(Klasアイコン.png);「は……陛下も御存知の通り、スヴィド...
&ref(Klasアイコン.png);「シグルド陛下は堂々これを迎え撃た...
&ref(Klasアイコン.png);「御心を痛まれたギュラ様は我が軍に...
&ref(Klasアイコン.png);「シグルド陛下がギュラ様の御伴侶と...
&ref(Klasアイコン.png);「召還した我が軍はこれに応じ、スヴ...
スヴィドヨッドの内乱は、一旦シグルドの勝利によって収め...
それでもクラスがこの戦に兵を出したがっているのは、つま...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);(……家族、か)
しかし、アンラウフは暗澹とした心地で、4年前の夜の事を思...
* * * * *
――風が強く、苦しい夜。アンラウフを砦の軋みを聞きながら...
それは父の戦死の報がデンマークに届いた夜の事だった。
''「1月4日、シェラン王・グドフリド陛下は、ローシアン奪...
''「片手にサクス、片手にハチェットを握り、ベルセルクの...
''「しかし、敵兵力はシェラン軍の10倍を越え、その量を以...
南方諸島王国の遣いの報告を思い出しながら、アンラウフの...
胸の中にあったのは悲しみでも悔しさでもなかった。戦への...
父がオーフスに来た時、父はブリタニエではなく、ヴァルホ...
父はシェランで平和な日々を過ごしながら、戦士として、兄...
「あの声」は、海の向こうの戦場だけじゃなくて――ヴァルホ...
&ref(Lindaアイコン.png);「…………」
&ref(Anlaufrアイコン.png);「……! リ、リンダ姉様!?」
寝室に、夜闇から溶け出す様にして現れた無音の侵入者に、...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「な、何で……今はウラジミールに...
再会を喜ぶ前に、訝しむのは当然だった。こんな強風の深夜...
しかし、彼女が現れるのが「こんな嵐の深夜」である事には...
闇と荒天は隠密の友……そう、女王の長女である彼女が、成人...
彼女はフレイヤの懐刀として陰謀と暗殺をこなし、暴き、退...
リンダとは「滑らかで柔かなもの」「シナの枝」、そして「...
&ref(Lindaアイコン.png);「怖いのですか」
&ref(Anlaufrアイコン.png);「え……」
交わす挨拶も説明もなく発せられた、内心を見透かす一言に...
そこには、ありありと失望の色が見て取れた。リンダから見...
すると、リンダの影が揺れた――
&ref(Anlaufrアイコン.png);「ね、姉さ……ッ!?」
&ref(Lindaアイコン.png);「…………アンラウフ、貴方は失格です...
アンラウフは寝台に押し倒され、その口を右掌で塞がれてい...
&ref(Lindaアイコン.png);「貴方の様な臆病者を送られては母...
&ref(Anlaufrアイコン.png);(殺される!? 姉様に!!?)
アンラウフが死の恐怖に眼を瞑った時、耳を劈く轟音と共に...
それに目測を狂わされたか、リンダの短刀はアンラウフの耳...
&ref(Lindaアイコン.png);「ッつ……!?」
アンラウフは反射的に口を塞ぐリンダの手に噛み付き、力の...
恐怖に震えている筈なのに、驚く程滑らかに無骨な白刃が露...
自分の表情も消えている事が、アンラウフには解った。
&ref(Anlaufrアイコン.png);「……僕を、殺すの?」
&ref(Lindaアイコン.png);「殺します」
&ref(Anlaufrアイコン.png);「何で?」
&ref(Lindaアイコン.png);「貴方が王に相応しくない臆病者だ...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「アルンビョルンは?」
&ref(Lindaアイコン.png);「次の審査対象です。相応しくなけ...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「…………何で……!」
&ref(Lindaアイコン.png);「長く厳しい『冬』が来ます。『我...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「……何でッ! 臆病者でいけない...
&ref(Lindaアイコン.png);「!?」
それは恐らく、アンラウフが人生で初めて発する怒声だった。
&ref(Anlaufrアイコン.png);「強くて、勇敢で、戦いと争いと...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「父様だって往ってしまったんだ...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「喜んで死にに行ける事が、そん...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「そんなに、そんなに戦ってばか...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「僕の知らない所で! 僕を巻き...
雷鳴。屋外の大気はアンラウフの怒気に応えて今や暴風とな...
&ref(Lindaアイコン.png);「……」
&ref(Anlaufrアイコン.png);「……」
お互いに刃を突きつけ合い、姉弟は対峙している。アンラウ...
&ref(Anlaufrアイコン.png);(何が、『ノルドは家族を見捨て...
父の言葉が虚しく反芻される。余りに複雑な怒りがアンラウ...
――すると、リンダが短刀を下ろす。
&ref(Lindaアイコン.png);「……いいでしょう、生きなさい」
&ref(Anlaufrアイコン.png);「え……?」
&ref(Lindaアイコン.png);「トールに免じて許します。ただし...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「いないよ、神様なんて……馬鹿馬...
&ref(Lindaアイコン.png);「そう思いたければ、そう思えばい...
リンダがそこまで言った時、アンラウフの怒声を聞き付けた...
アンラウフがそれに応じるべきか逡巡し、扉からリンダに視...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「……エーシルだろうと、ヴァニル...
もう一度だけ雷鳴が轟いた。その夜、雷が鳴る事はもう無か...
* * * * *
あの夜以来、リンダはアンラウフの前に姿を現していない。...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);(『フレイヤの末裔』に相応しく...
どんなに暗い夜でも、どんなに激しい嵐でも、どれだけ離れ...
嘗ては母・フレイヤの写し身とも呼ばれて美を讃えられたア...
それはノルド戦士としては恥ずべき容姿、ありえない体型だ...
しかしそんな事は、この場で「家族」という言葉の使い方が...
この体型が「家畜の様な愚鈍の顕れ」とされるか、「デンマ...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);(……下らん茶番だ)
人間は信じたいものばかりを信じるという事をアンラウフは...
ノルド人がヴァルホールを信じる様に、キリスト教徒が最後...
「信じたい」と思わせられるものを、演じれば良いのだ。
&ref(Anlaufr2アイコン.png);「良かろう、ノルドは決して家族...
&ref(Klasアイコン.png);「はっ! このクラス、大勝を約束い...
キリスト教徒に較べれば取るに足らない相手だ、デンマーク...
しかし、そう、問題はキリスト教徒だ。デンマークは直ぐ南...
キリスト教徒達の関心は今でこそブリタニエとイスラム教国...
奴らが「ヴァイキングに勝てる」という確信を得る前に、デ...
自分が『フレイヤの末裔(フローニ)』である証明の為に。...
そして何よりも、このユランを戦場としない為に、キリスト...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);(そんなに戦いたいなら、戦場は...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);(でも……父の様に死ぬのも、姉様...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);(だから、戦場は常に僕のいない...
取るべき次の一手は既にアンラウフの胸中にあった。それは...
''弱きノルドは強きノルドに服するが定め。''
アンラウフは、今スカンディアで最も強力な氏族に狙いを定...
それは嘗てスヴェア人に「フロージの平和」を齎した、もう...
「地球の力尽きて終わる場所」を統べる大氏族。
ノルウェー王族・『フレイの末裔(インリング)』
&ref(Anlaufr2アイコン.png);(……全く、どいつもこいつも)
アンラウフは内心で冷笑した。自分の背後で、母が同じ様に...
*アンラウフ王(中編)9.26.898~ [#y83f7e99]
**「フレイの末裔」、インリング家。 [#w65a08bb]
成人したアンラウフの覇業について始める前に、南方諸島王...
それはデンマークの直北、スカンジナヴィア最厳寒の地を支...
インリングはその出自を神話時代に遡ると言われるノルド随...
「フロージ」……これはインリング最初の王の名であるが、そ...
'''ニョルドの治世が終わると、フレイが王国を支配し、スヴ...
'''彼はウプサラに立派な寺院を建て、玉座をそこに置き、全...
'''彼の妻はギュミスの娘・ゲルド、息子はフョルネの名で知...
女神・フレイヤの双子とされる豊穣の美男神・フレイはその...
神話の真偽はともかくとして、フレイヤが歴史に現れた9世紀...
&ref(Harald.png); &ref(Ynling's Domain.png);
この王は武勇と才気に優れた野心家であり、886年頃にノルウ...
&ref(Fairhair.png); 901年頃のハラルド美髪王とその版図・...
この統一事業にはロマンティックな伝説が残っている……ノル...
しかし、ホルダランドのエイリークに娘がいたという記録も...
このハラルド美髪王の三男・バッゲは私生児であった為に領...
&ref(History of Norway Crown.png);
この資料は901年頃のものだが、ハラルド王の死後8年で3度の...
・ハラルドの次男・グンナール王。父と並ぶ武勇と才覚で知ら...
・ハラルドの長女・ローンヒルド女王。暗殺で王位を得るも、...
・ローンヒルドの長女・ミラ女王。僅か1歳で戴冠するも、下記...
・ハラルドの従弟・ローンヴァルド。残酷で短気、かつ自分勝...
スヴィドヨッド王位を争うムンソ兄弟の様に内乱にこそなっ...
そしてその隙を、アンラウフ王に突かれる事となる。
**アンラウフの下準備 [#ta7a0f5e]
アンラウフが成人して最初に行ったのは、ブリテン島から引...
しかし、これと平行して、リューリクの孫・マエル姫(当時1...
&ref(Maer.png);リューリクの孫・マエル姫。リューリクの長男...
未だ野心溢れ、版図を拡げ続けるリューリクであったが、既...
仮に内乱があるとしても最初に王位を継承するのは長男・ヘ...
マエル姫は生まれ付き脚に見て解る異常(内反足)があり、...
最も、二人の結婚生活の初めは余り幸福なものではなかった...
アンラウフの同性愛者説については、彼が没するまでに彼女...
&ref(Sports.png);
アルンビョルン暗殺は何度も露呈と失敗繰り返した様だが、9...
894年に父・グドフリドは戦死しており、シェラン・フュン両...
&ref(baltic way.png); &ref(Battle of Kastelholm.png);
スヴィドヨッド救済は、上陸したデンマーク軍が占領軍をあ...
この頃、ノルウェーはミラ女王が即位したばかりであり、摂...
彼女の治世が長くは続かない事を見越したアンラウフは、数...
そして、その時は思ったよりも早く訪れた。上記の資料の通...
**ノルウェー服属戦争 [#t5e8a801]
宣戦布告が行われたのは902年の2~3月頃、偵察に出した船が...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);「『フレイの末裔』を騙る者、家...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);「我らフローニは汝らに、我らと...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);「しかし、ハラルド王の死の後に...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);「『フロージの平和』を汝らに求...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);「さもなくば、我が軍はヒルディ...
&ref(Rognvaldrアイコン.png);「狂女の子、ユランの豚、蒙昧...
&ref(Rognvaldrアイコン.png);「弟殺しめがいけしゃあしゃあ...
&ref(Rognvaldrアイコン.png);「インリングの名はウプサラに...
&ref(Rognvaldrアイコン.png);「勝利の剣の輝きを恐れぬなら...
万全を期してラップ人傭兵を雇ったデンマーク軍は総勢約380...
一方のローンヴァルドは三男・トールフィンの妻・リキッサ...
最初の戦いは、西ゴートランド軍の兵がダーラボーに集結し...
&ref(Battle of Dalaborg.png);
戦闘態勢の整う前に攻撃された西ゴートランド軍はデンマー...
デンマーク軍はその後、ノルウェー玉座のあるベルゲンフス...
&ref(Battle of Skien.png);
兵力では圧倒するデンマークであったが、この戦争でデンマ...
この山地はその名の通り「巨人の住処(ヨトゥンヘイム)」...
平野での訓練に慣れたデンマーク軍からは1000人規模の死者...
とはいえ、次々上陸してくるノルウェー軍を数に任せて撃滅...
&ref(Siege of Bergenhus.png);
この頃に、ラトガルとの戦いに勝利したホルムガルド軍の大...
……ともかく、以降は、ノルウェーの各地がデンマーク・スヴ...
&ref(Jotunheim.png);
905年4月1日。デンマークはノルウェーの服属を達成し、スカ...
&ref(Denmark Won.png);
**次の戦いへ。 [#x7985050]
戦勝後に開かれたティング(集会)でノルウェーの各氏族の...
それは、ホルムガルドの援軍についてである。
リューリクの強大さは解っていたつもりだったが、5000人規...
傭兵も雇っていたとはいえ、自軍を合わせれば8000人を超え...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);(或いは、やれるかも知れん……)
「フレイヤの末裔」であるアンラウフ王の戦い、その初戦が...
しかし、アンラウフは既に次の戦いに思いを馳せていた。敵...
しかし、そんなアンラウフの狙いを余所に、「同じ事」が繰...
――それも、フレイヤの時代とは、比較にならぬ規模で――。
|[[AAR/フレイヤの末裔/アンラウフ王(後編)]]に続く……予定...
終了行:
[[AAR/フレイヤの末裔]]
[[AAR/フレイヤの末裔/アンラウフ王(前編)]]
**幕間「地球の力尽きて終わる場所」 [#m8ca0abe]
'''その海岸は荒れ狂う海洋の波浪に洗われ'''
'''その末端は(スウェーデンと)同じくリフェ山地となり'''
'''そこで地球は力尽きて終わる'''
'''――『ハンブルク教会史』第四部『北欧諸島誌』'''
&ref(Klasアイコン.png);「申し上げます」
クラスは務めていつも通りに、威勢良く述べる。
&ref(Klasアイコン.png);「我がデンマーク軍はケント王国を中...
&ref(Klasアイコン.png);「アングル人どもはノルド人の恐ろし...
&ref(Klasアイコン.png);「南方諸島王国が版図を失したはこの...
&ref(Klasアイコン.png);「シグトリュグ陛下にあっては、この...
&ref(Klasアイコン.png);「然らば、これ以上の助勢は却って彼...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);「よくもまあそれだけ口が回るも...
&ref(Klasアイコン.png);「は?」
アンラウフは肥えた身体を玉座に預け、白い頬の肉を皮肉げ...
面々には、クラスの語る「戦勝」の喜びには程遠い、歯痒さ...
アンラウフの成人祝いを兼ねた凱旋式はクラスの指示で殊更...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);「独り言だ、続けよ」
&ref(Klasアイコン.png);「は……陛下も御存知の通り、スヴィド...
&ref(Klasアイコン.png);「シグルド陛下は堂々これを迎え撃た...
&ref(Klasアイコン.png);「御心を痛まれたギュラ様は我が軍に...
&ref(Klasアイコン.png);「シグルド陛下がギュラ様の御伴侶と...
&ref(Klasアイコン.png);「召還した我が軍はこれに応じ、スヴ...
スヴィドヨッドの内乱は、一旦シグルドの勝利によって収め...
それでもクラスがこの戦に兵を出したがっているのは、つま...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);(……家族、か)
しかし、アンラウフは暗澹とした心地で、4年前の夜の事を思...
* * * * *
――風が強く、苦しい夜。アンラウフを砦の軋みを聞きながら...
それは父の戦死の報がデンマークに届いた夜の事だった。
''「1月4日、シェラン王・グドフリド陛下は、ローシアン奪...
''「片手にサクス、片手にハチェットを握り、ベルセルクの...
''「しかし、敵兵力はシェラン軍の10倍を越え、その量を以...
南方諸島王国の遣いの報告を思い出しながら、アンラウフの...
胸の中にあったのは悲しみでも悔しさでもなかった。戦への...
父がオーフスに来た時、父はブリタニエではなく、ヴァルホ...
父はシェランで平和な日々を過ごしながら、戦士として、兄...
「あの声」は、海の向こうの戦場だけじゃなくて――ヴァルホ...
&ref(Lindaアイコン.png);「…………」
&ref(Anlaufrアイコン.png);「……! リ、リンダ姉様!?」
寝室に、夜闇から溶け出す様にして現れた無音の侵入者に、...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「な、何で……今はウラジミールに...
再会を喜ぶ前に、訝しむのは当然だった。こんな強風の深夜...
しかし、彼女が現れるのが「こんな嵐の深夜」である事には...
闇と荒天は隠密の友……そう、女王の長女である彼女が、成人...
彼女はフレイヤの懐刀として陰謀と暗殺をこなし、暴き、退...
リンダとは「滑らかで柔かなもの」「シナの枝」、そして「...
&ref(Lindaアイコン.png);「怖いのですか」
&ref(Anlaufrアイコン.png);「え……」
交わす挨拶も説明もなく発せられた、内心を見透かす一言に...
そこには、ありありと失望の色が見て取れた。リンダから見...
すると、リンダの影が揺れた――
&ref(Anlaufrアイコン.png);「ね、姉さ……ッ!?」
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アンラウフは寝台に押し倒され、その口を右掌で塞がれてい...
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アンラウフが死の恐怖に眼を瞑った時、耳を劈く轟音と共に...
それに目測を狂わされたか、リンダの短刀はアンラウフの耳...
&ref(Lindaアイコン.png);「ッつ……!?」
アンラウフは反射的に口を塞ぐリンダの手に噛み付き、力の...
恐怖に震えている筈なのに、驚く程滑らかに無骨な白刃が露...
自分の表情も消えている事が、アンラウフには解った。
&ref(Anlaufrアイコン.png);「……僕を、殺すの?」
&ref(Lindaアイコン.png);「殺します」
&ref(Anlaufrアイコン.png);「何で?」
&ref(Lindaアイコン.png);「貴方が王に相応しくない臆病者だ...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「アルンビョルンは?」
&ref(Lindaアイコン.png);「次の審査対象です。相応しくなけ...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「…………何で……!」
&ref(Lindaアイコン.png);「長く厳しい『冬』が来ます。『我...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「……何でッ! 臆病者でいけない...
&ref(Lindaアイコン.png);「!?」
それは恐らく、アンラウフが人生で初めて発する怒声だった。
&ref(Anlaufrアイコン.png);「強くて、勇敢で、戦いと争いと...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「父様だって往ってしまったんだ...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「喜んで死にに行ける事が、そん...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「そんなに、そんなに戦ってばか...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「僕の知らない所で! 僕を巻き...
雷鳴。屋外の大気はアンラウフの怒気に応えて今や暴風とな...
&ref(Lindaアイコン.png);「……」
&ref(Anlaufrアイコン.png);「……」
お互いに刃を突きつけ合い、姉弟は対峙している。アンラウ...
&ref(Anlaufrアイコン.png);(何が、『ノルドは家族を見捨て...
父の言葉が虚しく反芻される。余りに複雑な怒りがアンラウ...
――すると、リンダが短刀を下ろす。
&ref(Lindaアイコン.png);「……いいでしょう、生きなさい」
&ref(Anlaufrアイコン.png);「え……?」
&ref(Lindaアイコン.png);「トールに免じて許します。ただし...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「いないよ、神様なんて……馬鹿馬...
&ref(Lindaアイコン.png);「そう思いたければ、そう思えばい...
リンダがそこまで言った時、アンラウフの怒声を聞き付けた...
アンラウフがそれに応じるべきか逡巡し、扉からリンダに視...
&ref(Anlaufrアイコン.png);「……エーシルだろうと、ヴァニル...
もう一度だけ雷鳴が轟いた。その夜、雷が鳴る事はもう無か...
* * * * *
あの夜以来、リンダはアンラウフの前に姿を現していない。...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);(『フレイヤの末裔』に相応しく...
どんなに暗い夜でも、どんなに激しい嵐でも、どれだけ離れ...
嘗ては母・フレイヤの写し身とも呼ばれて美を讃えられたア...
それはノルド戦士としては恥ずべき容姿、ありえない体型だ...
しかしそんな事は、この場で「家族」という言葉の使い方が...
この体型が「家畜の様な愚鈍の顕れ」とされるか、「デンマ...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);(……下らん茶番だ)
人間は信じたいものばかりを信じるという事をアンラウフは...
ノルド人がヴァルホールを信じる様に、キリスト教徒が最後...
「信じたい」と思わせられるものを、演じれば良いのだ。
&ref(Anlaufr2アイコン.png);「良かろう、ノルドは決して家族...
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キリスト教徒に較べれば取るに足らない相手だ、デンマーク...
しかし、そう、問題はキリスト教徒だ。デンマークは直ぐ南...
キリスト教徒達の関心は今でこそブリタニエとイスラム教国...
奴らが「ヴァイキングに勝てる」という確信を得る前に、デ...
自分が『フレイヤの末裔(フローニ)』である証明の為に。...
そして何よりも、このユランを戦場としない為に、キリスト...
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&ref(Anlaufr2アイコン.png);(でも……父の様に死ぬのも、姉様...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);(だから、戦場は常に僕のいない...
取るべき次の一手は既にアンラウフの胸中にあった。それは...
''弱きノルドは強きノルドに服するが定め。''
アンラウフは、今スカンディアで最も強力な氏族に狙いを定...
それは嘗てスヴェア人に「フロージの平和」を齎した、もう...
「地球の力尽きて終わる場所」を統べる大氏族。
ノルウェー王族・『フレイの末裔(インリング)』
&ref(Anlaufr2アイコン.png);(……全く、どいつもこいつも)
アンラウフは内心で冷笑した。自分の背後で、母が同じ様に...
*アンラウフ王(中編)9.26.898~ [#y83f7e99]
**「フレイの末裔」、インリング家。 [#w65a08bb]
成人したアンラウフの覇業について始める前に、南方諸島王...
それはデンマークの直北、スカンジナヴィア最厳寒の地を支...
インリングはその出自を神話時代に遡ると言われるノルド随...
「フロージ」……これはインリング最初の王の名であるが、そ...
'''ニョルドの治世が終わると、フレイが王国を支配し、スヴ...
'''彼はウプサラに立派な寺院を建て、玉座をそこに置き、全...
'''彼の妻はギュミスの娘・ゲルド、息子はフョルネの名で知...
女神・フレイヤの双子とされる豊穣の美男神・フレイはその...
神話の真偽はともかくとして、フレイヤが歴史に現れた9世紀...
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この王は武勇と才気に優れた野心家であり、886年頃にノルウ...
&ref(Fairhair.png); 901年頃のハラルド美髪王とその版図・...
この統一事業にはロマンティックな伝説が残っている……ノル...
しかし、ホルダランドのエイリークに娘がいたという記録も...
このハラルド美髪王の三男・バッゲは私生児であった為に領...
&ref(History of Norway Crown.png);
この資料は901年頃のものだが、ハラルド王の死後8年で3度の...
・ハラルドの次男・グンナール王。父と並ぶ武勇と才覚で知ら...
・ハラルドの長女・ローンヒルド女王。暗殺で王位を得るも、...
・ローンヒルドの長女・ミラ女王。僅か1歳で戴冠するも、下記...
・ハラルドの従弟・ローンヴァルド。残酷で短気、かつ自分勝...
スヴィドヨッド王位を争うムンソ兄弟の様に内乱にこそなっ...
そしてその隙を、アンラウフ王に突かれる事となる。
**アンラウフの下準備 [#ta7a0f5e]
アンラウフが成人して最初に行ったのは、ブリテン島から引...
しかし、これと平行して、リューリクの孫・マエル姫(当時1...
&ref(Maer.png);リューリクの孫・マエル姫。リューリクの長男...
未だ野心溢れ、版図を拡げ続けるリューリクであったが、既...
仮に内乱があるとしても最初に王位を継承するのは長男・ヘ...
マエル姫は生まれ付き脚に見て解る異常(内反足)があり、...
最も、二人の結婚生活の初めは余り幸福なものではなかった...
アンラウフの同性愛者説については、彼が没するまでに彼女...
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アルンビョルン暗殺は何度も露呈と失敗繰り返した様だが、9...
894年に父・グドフリドは戦死しており、シェラン・フュン両...
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スヴィドヨッド救済は、上陸したデンマーク軍が占領軍をあ...
この頃、ノルウェーはミラ女王が即位したばかりであり、摂...
彼女の治世が長くは続かない事を見越したアンラウフは、数...
そして、その時は思ったよりも早く訪れた。上記の資料の通...
**ノルウェー服属戦争 [#t5e8a801]
宣戦布告が行われたのは902年の2~3月頃、偵察に出した船が...
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&ref(Rognvaldrアイコン.png);「弟殺しめがいけしゃあしゃあ...
&ref(Rognvaldrアイコン.png);「インリングの名はウプサラに...
&ref(Rognvaldrアイコン.png);「勝利の剣の輝きを恐れぬなら...
万全を期してラップ人傭兵を雇ったデンマーク軍は総勢約380...
一方のローンヴァルドは三男・トールフィンの妻・リキッサ...
最初の戦いは、西ゴートランド軍の兵がダーラボーに集結し...
&ref(Battle of Dalaborg.png);
戦闘態勢の整う前に攻撃された西ゴートランド軍はデンマー...
デンマーク軍はその後、ノルウェー玉座のあるベルゲンフス...
&ref(Battle of Skien.png);
兵力では圧倒するデンマークであったが、この戦争でデンマ...
この山地はその名の通り「巨人の住処(ヨトゥンヘイム)」...
平野での訓練に慣れたデンマーク軍からは1000人規模の死者...
とはいえ、次々上陸してくるノルウェー軍を数に任せて撃滅...
&ref(Siege of Bergenhus.png);
この頃に、ラトガルとの戦いに勝利したホルムガルド軍の大...
……ともかく、以降は、ノルウェーの各地がデンマーク・スヴ...
&ref(Jotunheim.png);
905年4月1日。デンマークはノルウェーの服属を達成し、スカ...
&ref(Denmark Won.png);
**次の戦いへ。 [#x7985050]
戦勝後に開かれたティング(集会)でノルウェーの各氏族の...
それは、ホルムガルドの援軍についてである。
リューリクの強大さは解っていたつもりだったが、5000人規...
傭兵も雇っていたとはいえ、自軍を合わせれば8000人を超え...
&ref(Anlaufr2アイコン.png);(或いは、やれるかも知れん……)
「フレイヤの末裔」であるアンラウフ王の戦い、その初戦が...
しかし、アンラウフは既に次の戦いに思いを馳せていた。敵...
しかし、そんなアンラウフの狙いを余所に、「同じ事」が繰...
――それも、フレイヤの時代とは、比較にならぬ規模で――。
|[[AAR/フレイヤの末裔/アンラウフ王(後編)]]に続く……予定...
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