[[AAR/ハプスブルグ家で普通にプレイ]] **はじめに [#a7def88c] 「そうか、バルダリッチ王が亡くなられたか。」 私は悲痛な表情を浮かべ、とても残念がるような仕草をしてみせた。 「はい。」 都より来た使者は私のその様子を見て安心したというような表情を浮かべながら用件を切り出す。 「マグヌス様、早急に都へとお越しください。陛下は生前より貴方を次の王として指名されておられました。」 「うむ。偉大な先王の遺志を継ぎ、先王には遠く及ばないが、私がこの国をさらに発展させねばな。」 そう言って私は使者に頭を下げる。 「よろしく頼むぞ。」 「お、おやめください!こちらこそ、これからよろしくお願いいたします、陛下。」 使者のそんな言葉を聞いて、私は使者に見られないように舌を出した。 #br #br 悪王バルダリッチを崇めし面汚し共と、彼の王の代に大きな権勢を得たネウチャテル閥の貴族どもよ。 首を洗って待っていろ、この私がハプスブルグ家を元ある姿に必ず戻してやるからな。 #ref(9話その1.jpg) 新王マグヌス。彼の目的は一体何なのか。 **私の目的 [#sfc801e7] 都へと来て宮廷にて即位と引き継ぎのための諸々の行事を終えてようやく1人になれた私は高まる感情を抑えられずにはいられなかった。 「ようやくここまで来た。」 「ここまで来るのに、彼の悪王に媚びへつらい、信頼を得るためにどれほど屈辱的なことをしてきたか。」 「だが、その甲斐あってか悪王も私を認め、自らの次の王に指名してくれた。」 「私は初代のシチリア王ワーラム様に大きな恩がある。」 「悪王によってワーラム様の子孫であるハプスブルグ本家はシチリア王位を継承することを妨げられ、現在はサブォイア公として逼塞されておられる。」 「何としてもシチリア王位を本家にお返しせねばならない。」 私は気分のさせるがままに一気にまくしたてた。 「だが、今はシチリア国内においては悪王の系統であるネウチャテル閥が強い力を持っている。少しでも悪王を否定するような行動をとれば、彼らはすぐに私を王位より引きずり下ろすであろう。」 「今は隠忍自重し、時期を待たねばならない。」 **仮面の政策 [#gcdfb324] 1209年1月。悪王の行っていたアマルフィ公国との戦は我々の勝利に終わり、彼の国の有していたサレルノが私の領地となった。 #ref(9話その2.jpg) 私はこの地に都を移すことを決めた。現在の都では悪王の息のかかった者が多すぎるのだ。 もっとも、突然の遷都によりネウチャテル閥の不信と反発が予想されるので、それらしい理由をつけることにした。 「サレルノはシチリアの中心である。この地に都を移し、良くシチリアを治めることこそ、偉大なる先王の意にかなったことである」 取ってつけたような理由ではあるが、私が悪王の崇拝者であることを信じて疑わないネウチャテル閥の貴族たちはこれを信じ、かくしてサレルノへの遷都は無事に行うことができたのだ。 #br #br 「王よ、先王の進められたシチリアの在地貴族の取り潰しを再開してください。」 私にそう進言してくるのはベネベント公ベルソルド・ハプスブルグ。悪王バルダリッチとはいとこにあたり、現在のネウチャテル閥の指導者である。 #ref(9話その3.jpg) ベネベント公ベルソルド。ネウチャテル閥のドン。 「私もそう考えていた。早速そのようにしよう。」 「おお!さすがは王です。つきましては、ハプスブルグの一族の中でもこれはと思う者を私が推薦いたしますので、その者たちに没収した土地を与えてはいただけませぬかな?」 一族のネウチャテル系の者に所領を与え、派閥の力をさらに強めようとする魂胆は見え見えである。 「それはできない。」 まさかの私の拒絶に、ベルソルドは狼狽しながら声を荒げる。 「な、何ということですか!お、王は我々を軽視されるのか!!」 「ご安心なされよ。そのようなつもりはない。没収した土地は私の直轄領にしたいのだ。」 「王は自らの力を強め、我々を排除するつもりなのではないですか!?」 私の返答に、ベルソルドは不信感をさらに高める。そんな彼に私は言った。 私の返答に、ベルソルドは不信感をさらに高めたようだ。そんな彼に、私はある問いかけをする。 「ベルソルド殿。私の次の王は誰になると思う?」 私の脈絡のない唐突な問いかけにベルソルドはさらに混乱しているようだ。 「は、はあ?年長者相続により次はディエター殿ではないのですか?」 「あれは病持ちで先は長くない。その次は誰が王になる?」 私の言葉にベルソルドはようやく得心いったようだ。 「あ、ああ!私です。」 「そうだ。次の王は貴方だ。王の直轄領も最終的には貴方たちのものになるのだ。それまでの間、どうか私に預けて開発させてはくれないか。」 私はベルソルドに頭を下げる。 「おやめください、王よ。そのような事情であれば、没収した土地は王にお任せいたします。」 ベルソルドの言葉に、私は彼に気付かれないようにニヤリと笑った。 #br #br 悪王の方針を踏襲したシチリア在地貴族の取り潰し政策は、一部の貴族が拒否して戦となったものの #ref(9話その4.jpg) 「反乱者」を鎮圧する我が軍。 おおむね成功し、没収した領地は王領とすることに成功したのであった。 **バルダリッチの娘 [#i9a7864f] 私の元に、ある興味深い報告が届いた。 どうも、私に恋心を抱いている女性がいるらしい。自慢ではないが私も若い頃はなかなかの美形であったし、現在では王座にある身。私に憧れる女性の1人や2人、いてもおかしくはない。 問題はその女性に問題があった。 #ref(9話その5.jpg) 先王バルダリッチの6女フリーダ。 なんと悪王の忘れ形見、6女フリーダだったのだ! #br 悪王の娘を手籠めにすることができればなんとも痛快なことよ。私は早速行動に移した。 #ref(9話その6.jpg) 結果、フリーダは私に夢中の様子だ。 #ref(9話その7.jpg) はははは!悪王バルダリッチよ、あの世でさぞや私に対する憎しみの念を高くしていることだろう。貴様の愛娘は今や私の掌中にあるのだからな!! フハハハハハハハ! #br だが、私は思わぬ打撃を受けることとなる。 フリーダは男の子を出産すると、あろうことか私との間の不義の子であることを世間に公表してしまったのだ! そのうえで、子の認知を私に迫って来た。世間の目は厳しい。私は渋々とフリーダの産んだ男子を自らの子であると認めざるを得なかった。 #ref(9話その8.jpg) 私が自分の子だと認めるや否や、彼女は私との関係の終わりを告げてきた。 ああ、なんともしたたかな女であろうか。さすがは悪王の娘よ・・・・・ おかげで私は「不貞節王」と陰口をたたかれるようになってしまったし、妻との仲も最悪だよ。 **選挙制 [#o87cff2f] 「今や陛下の人気はうなぎのぼりです」 我が腹心の1人が、そう私をほめそやす。 1212年に始まった宿敵アマルフィ公(現在ではサレルノ公も称している)との因縁の戦に、5年の歳月が経った1217年の今日、アマルフィ伯領のこちらへの割譲で講和が結ばれたのだ。 #ref(9話その9.jpg) 大勝利であった。 この大勝により、シチリアの貴族たちは私を大きく評価するようになっていた。 「今こそシチリア王冠を本家にお返しするために動く時だな。」 翌日、国内が勝利の歓喜に沸き立つ中、私はある布告を出す。 #ref(9話その10.jpg) シチリア王国の王位継承法を年長者相続より選挙制に改める。 この布告に多くの者が賛同した。ネウチャテル閥という一部の者を除いて・・・。 #br #br 「王が本性を現しよったか・・。」 ネウチャテル閥の指導者、ベネベント公ベルソルドは苛々気にそう呟いた。 「サヴォイアの本家に王位を渡すことが王の真意であろう。だが、そうはさせぬぞ。」 #br 私は早速、ハプスブルグ本家当主であるサヴォイア公オットー様を次の王として指名した。 しかし、私の真意を知ったネウチャテル閥は全力でそれの阻止にかかった。 彼らは意外な人物を対抗馬として擁立した。 #ref(9話その11.jpg) 対抗馬クリストファー。 その人物とは、クリストファー・ハプスブルグ。何と、悪王バルダリッチの政敵であった故グリソンス伯クリストファー殿の次男なのだ! 確かに、彼の貴族たちからの人気は非常に高かったし、次期王の候補としては相応しい人物であった。 しかし、悪王と生涯犬猿の仲であった「ハプスブルグ3兄弟の3弟」の子を担ぎ出すとは、まさにネウチャテル閥の権力を保つための必死さを感じたよ。 #br これ以後、王党派とネウチャテル閥の間で次期王を巡る暗闘が繰り広げられることとなる。 **ネウチャテル閥の分裂 [#kc3ebe39] ネウチャテル閥との水面下での暗闘は最終的には我々の勝利に終わった。 まず、ネウチャテル・ハプスブルグ家の現当主、ネウチャテル伯フェルディナンドの懐柔に成功したのだ。 元々彼はネウチャテル閥とは一線を画しており、こちらの支持に傾かせるのはそう難しいことではなかった。 彼は悪王の弟トーマスの子であり、父と同様、叔父のことが大嫌いであり、その叔父の築いたネウチャテル閥のことも嫌悪していた。 「王を支持するにあたって1つだけ条件がある。上ブルグンド公爵位をいただきたい」 彼からの抜け目のない提示に、私はさすがは悪王の甥だ、と苦笑したものだ。 その日のうちにフェルディナンドは新たに上ブルグンド公に封じられた。 #ref(9話その12.jpg) 新上ブルグンド公爵フェルディナンド。ネウチャテル・ハプスブルグ家現当主でネウチャテル伯も兼務する。 #br #br ネウチャテル閥内においても大きな対立が存在していた。 ネウチャテル閥の指導者ベネベント公ベルソルドと、悪王バルダリッチの娘婿カラブリア公ハンベルトの系統で大きく争っていたのだ。 「私はバルダリッチ様より派閥の指導者として任されたのだ。私に従え。」 ベルソルドがそう声高に叫ぶと、 「何を言うか。指導者に大切なものは何よりも血筋である。指導者には私の子であり、バルダリッチ様の孫こそが正当なのだ。」 ハンベルトはそう応酬した。 ベルソルドには元々ネウチャテル閥という巨大集団をまとめ上げるカリスマ性も才覚も不足していた。 悪王の築き上げた巨大権益集団の分裂は避けられなかったのだ。 結局、ハンベルトはネウチャテル閥からの脱退を宣言し、500ダカットもの膨大な額の報酬を条件に王の支持に回ったのだ。 #ref(9話その13.jpg) カラブリア公ハンベルト。悪王の娘婿。皮肉にも、悪王を最も敬愛していた彼がネウチャテル閥を破壊した。 #br #br こうして、次の王はオットー様で確定させることができた。それとともに、ネウチャテル閥も大きくその力を弱める事に成功したのだ。 ** [#saf4badc] 私は満足していた。悪王の遺したこの国の癌、ネウチャテル閥を解体することができたし、シチリア王冠もハプスブルグ本家に返すことができそうだからだ。 もう、私に思い残すことはない。 #br 1220年。シチリア王マグヌスは世を去った。享年72。後はハプスブルグ本家当主、サヴォイア公オットーが継いだ。 #ref(9話その14.jpg) **おまけ [#ze9f0356] シチリア王国での政争がようやく静まったころ、遥か東においては異変が起きていた。 #ref(9話その15.jpg) モンゴル高原を統一した大ハーンテムジンが麾下の獰猛な遊牧民を従えて西進を開始したのだ。 **おまけその2 [#kf6806c5] #ref(9話その16.jpg) 「騎士団に金を寄付しろ。さもないと、お前の息子を騎士団に拉致しておまけに独身主義者にしてくれるぞ。」 何だこのイベント・・・。 TIME:"2015-11-21 (土) 09:44:20"