[[AAR/ハプスブルグ家で普通にプレイ]]

**はじめに [#de304e3e]

私がその知らせを受けたのは、逆賊コチルダを討伐するためにカプアへと向かう途上のことだった。
「父さんが死んだだと!?」
私の驚いた表情を見て、側近の一人が私をなぐさめるかのように言う。
「お父君のご逝去、心中お察しいたします。」
私は側近をギロリと睨み付ける。
「で、ですがこれで晴れてオットー様が公爵になられたわけでして。そのことにつきましては本当におめでとうございます。」
私の睨み顔にびっくりしたのか、側近がしどろもどろにそう言ってきた。
「まあその通りだな。」
私は睨み顔をやめて笑みを浮かべる。側近がそれを見て安堵の表情を浮かべているのが非常に愉快だ。
「ここは新公爵として、父の遺志を継ぎ、何としてもコチルダの討伐を達成させねばな。」
「は、はい。おっしゃる通りです!オットー様こそハプスブルグの家門を隆盛へと導くお方!」
「誉めすぎだ。だが、とても嬉しいぞ。私は愉快だ。」
私は上機嫌で馬へとまたがる。
「全軍に伝えよ。上ブルグンド公爵オットー・ハプスブルグの名において告げる!カプアを簒奪せし逆賊コチルダをいざ討たん!」
私の号令の下、上ブルグンド軍は統制のとれた見事な隊列で進軍を開始した。

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 新たに公爵に就いた私の肖像。


**コチルダ討伐 [#uf216aff]

1162年の初め。私が新たに公爵に即位し、さらに士気の高まった我が軍は、前の上ブルグンド摂政にして先代の後妻コチルダの籠るカプアの包囲を開始した。

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上ブルグンド公爵領内にてコチルダを支持するものは皆無であった。
良き伴侶として夫を支え、公爵領を盛り立てることを期待されて先代によって後添えとして迎えられておきながら、先代が無能力になると野心をあらわにしたこの女狐は完全に見放されたのだ。

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 野望多き女コチルダ。

そもそも、いくら公爵夫人だったとはいえ先代との間に子のないよそ者のこの女が如何にして我が上ブルグンド宮廷にて力を強めていったのか。
この女の権力基盤は実家にあった。この女狐、たちが悪いことに皇帝の娘だったのだ。

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 コチルダの父、皇帝ハインリヒ5世。

実家、皇帝ザーリア家の威光を利用して宮廷内で着々と支持者をつくったコチルダは、先代が無能力になった時、あろうことか私から摂政の地位を奪い取ろうとした。
「義母様、父がまだ元気な頃より父に何かあった際には私が摂政に就くことが決まっておりました。これは父の決めた、公爵領にて最も尊重されなければならない取り決めですぞ。」
大勢の廷臣を引き連れ、私に摂政の座より退くよう要求してきた彼女に、私は毅然と言った。
「オットーよ、わたくしは畏れ多くも皇帝陛下の娘ですよ?」
物事の正しき筋道を説く私に、コチルダは予想通りの返しをしてきた。
「だから何なのですか?貴女が摂政に就く正当性はありませんよ。」
「わたくしが父に頼めば、そなたらから公爵位を剥奪させることも可能なのですよ?」
「いくら皇帝であろうと、そのような暴挙許されません。そもそも聡明なる陛下がそのような進言に聞く耳を持つはずがございません。」
「ぶ、無礼者!皇帝の娘であるわたくしをないがしろにする気か!!」
私が皇帝の威にも屈しないことが予想外だったのか、コチルダは狼狽の表情を浮かべながら叫んだ。
「お引き取り下さい。おい、衛兵!」
私は勝ったと感じ、衛兵にこの身の程知らずの女狐を逮捕するよう命じた。
ところが、駆けつけてきた衛兵は何を血迷ったのか私を取り押さえてきたのだ!
「お前たち、自分が何をしているのかわかっているのか?」
内心動揺しているものの表面上は冷静を装いながら私は尋ねた。それに衛兵ではなく勝ち誇った表情を浮かべたコチルダが答えた。
「愚か者め!すでにここの衛兵はこちらが買収済みだわ!!」
ああ、何ということだろうか。
これによって、コチルダは晴れて父の摂政となり、私は宮廷内の1室に幽閉されることになってしまったのであった。

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その後、諸君も周知のことだと思うが、コチルダ一派がカプアの視察に赴いている間に摂政の地位を奪還したのだ。
あの屈辱、簡単に忘れられるものではない。カプアの城壁を見ながら、中にいるであろう女狐の憎々しい姿を想像し、苦々しい思いを抱かずにはいられなかったよ。

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1162年の末。1年近い包囲にとうとうコチルダは根を上げて降伏を申し出てきた。

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女狐はカプアの地を剥奪され、獄につながれた。
この時ほど愉快な出来事を私は知らない。私がかつて受けた屈辱をこの女にも受けさせてやる!私は意気揚々であった。

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そんな時、都より皇帝の使者が来た。
「皇帝陛下はコチルダ様の釈放を強く願われております。コチルダ様のなされたことは許されることではありません。ですが、ここは何卒陛下のお顔に免じ、牢より出していただきたく・・・」
コチルダを解放するように、との皇帝からの要請だった。皇帝も人の親、獄につながれた娘が不憫でならないのだなあ、私はしみじみと感じたものだよ。
さて、どうしたものか。まあ、答えは最初から決まっているのだが。
もちろんNOだ。
「コチルダ様は犯した罪によって正当な投獄をされているのです。いくら皇帝陛下からのご要望であってもそれを曲げることはできません。おそれながら、陛下といえども帝国諸侯の領内での問題に口を挟むのは許されることではございません。賢明な陛下ならご存知のこととは思いますが。」
皇帝といえどもしょせんは諸侯の盟主にしか過ぎない。皇帝としての本分をわきまえぬなら諸侯はこぞって皇帝の退位に動くであろう。
私の回答は娘可愛さに物事の道理が見えなくなっている皇帝に釘をさす意味もあったのさ。

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私の回答に対し、皇帝からの返答は「上ブルグンド公の言う通りだ。すまなかった。」というものであった。
それ以降、皇帝より娘のことに関する要求は一切無かった。
ただ、皇帝も内で思うことがあったのだろう、私が都に参集を命じられることもそれ以降無かった。
結局私が死ぬまで皇帝とは疎遠だったなあ。
まあ、コチルダを死ぬまで牢から出さなかったから当然といえば当然だが、ちょっと大人げないよな。

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 投獄から2年後、コチルダは獄死した。

**バルダリッチ・ハプスブルグという男 [#f2f3318a]

私がまだコチルダ討伐でカプアを包囲していたころのこと。上ブルグンド本国より密偵頭から急使が来た。
「ネウチャテル伯バルダリッチ様が自らが上ブルグンド公爵になるための陰謀を進められている由。」

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バルダリッチ・ハプスブルグは初代ネウチャテル伯にして我が大叔父ウェルナー・ハプスブルグの孫である。ネウチャテル・ハプスブルグ家4代目当主だ。
もともと彼は先代の3男であり本来なら伯爵領を継ぐ立場ではなかったのだが、兄2人の急死により後を継ぐことになった。
この辺りの経緯がどうもきなぐさい。
彼の長兄こそ幼い頃に患った肺炎による死なので何もおかしなところはないが、次兄に関しては伯位を継いだ数日後に不審な事故死を遂げている。
次兄の死に関して、バルダリッチが何かしら関わっているとしか私には思えない。だって、次兄の死で一番得をするのは、後を継げる彼なのだから。

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こんな感じで、私はバルダリッチに対してはずっと警戒しており、密偵頭に命じて密かに監視させていたのだ。そしたら、案の定だよ。

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陰謀が発覚した時点で、穏便に済ませたい私はその愚かな計画を止めるように内々に諭した。
しかし、彼は強気だった。

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「私はそのような陰謀を企んではいない。仮に貴方が言うような陰謀があったとしてもそれを止めることはできない。もしも止めたいのであれば、力ずくでかかってくるしかないでしょう。もっとも陰謀が存在するのならばの話ですがな。」
「私はそのような陰謀を企んではいない。仮に貴方が言うような陰謀があったとしてもそれを止めることはできない。もしも止めたいのであれば、力ずくでかかってくるしかないでしょう。もっとも陰謀が存在するならばの話ですがな。」

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彼は頑なに拒絶したのだ。
当時、コチルダ討伐と、次に語るシチリア遠征で余裕のなかった私には何もできないと彼は考えていたのだろう。
そして、悔しいことにそれは事実なのだ。

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結局私は密偵頭に今後も監視を怠らないように厳命し、バルダリッチの陰謀を静観することにした。
その後この愚かな陰謀に賛同者が現れることはなく、彼も最終的に諦めたようで、なんとか穏便に済ませることができたよ。
ああ、そうそう。このバルダリッチという男は、その後の我が家の歴史に深く関わっていくこととなるから諸君らは頭の片隅にでもその名を刻んでおいてくれたまえ。


**シチリアの支配者 [#cac598c1]

コチルダの討伐が落着してすぐに、私は亡き父の悲願を達成させるために動いた。

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1162年末。我が妻ヨランダをシチリア王に就けるべく、シチリアに宣戦布告したのだ。
当時シチリア王位にあったのはセルビア人の幼女。
いくら祖母が先々代王の姉だとはいえ、正当性は皆無に等しい。
シチリア王国は誇り高きノルマン人の築いたオードブィル家の国だ。セルビア人の女王よりも先々代の末妹であるオードブィル家一族である我が妻の方が相応しい。
今こそ正当なるオードブィル家の女王を迎え、シチリアは混乱から立ち直るべきなのだ。
もっとも、シチリアを今の混乱状況に追い込んだ黒幕は我がハプスブルグ家なのだがな!

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宣戦布告と同時に上ブルグンド軍7000はシチリア領内へと殺到した。

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混乱状態にあったシチリアは周辺勢力からの宣戦布告や相次ぐ反乱により兵力を大きく減らしていた。
たった1公爵の兵力でも余裕で倒せる相手だったのさ。
シチリア王軍およそ2000を破った我が軍は王都アプリアを包囲した。

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まあ、この時点で我々の勝利は確定していたね。後は敵にこれ以上の継戦を諦めさせるだけだ。

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1169年。足掛け7年近くに及ぶ戦は我々の勝利に終わった。

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これにより我が妻はシチリア女王となり、元シチリア女王はアプリア公として妻に仕えることとなった。
これで妻の次のシチリア王は我が息子だ。
シチリア王冠がハプスブルグ家のものとなったのだ!私はとても喜んだよ。

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 新シチリア王である我が妻ヨランダ。


** [#mad47d51]

その驚愕する知らせが届いたのは、妻をシチリア王に就けて1年ばかりした頃のことだった。

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「シチリア王位の継承法が年長者相続に変更されました。」

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 何ということだ。

私はその知らせを信じることができなかった。

「どうしてそんなことになるのだ?」
「シチリア国内のオードブィル一族が圧力を掛けて強引に変更させたようです。」
「仮に反乱になったとしても妻には我々がついている。負けることはないのに、どうして妻は要求を呑んだのだ」
「どうやら奥様にもそこまで拒む気は無かったようです。奥様にとって、自分の子供よりもオードブィルのシチリアの方が大切だったようですな。」
「私は妻に裏切られたというのか。」
「恐れながら・・・」

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ああ、なんということだろうか。目前にまで迫っていたシチリア王冠があっさりと遠のいてしまったのだ。
おのれぇ、おのれぇ。

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諸君よ、よく集まってくれた。私も長くはない。諸君らに言っておきたいことがある。
ハプスブルグ家はシチリア王冠を絶対に諦めない!
それと、オードブィル家を絶対に許さない!
どのような手を使ってでも絶対にシチリア王位を手に入れてやる。

#br

ふう、少々興奮してしまったよ。後のことは息子に託すとしよう。
息子なら必ずや父と私の悲願を果たしてくれるであろう。

1177年5月。5代目上ブルグンド公爵オットー・ハプスブルグ死去。享年57。
後世、祖父のオットーと区別して、「オットー2世」「小オットー」と呼ばれることもある。
後は嫡男ワーラムが継いだ。


#ref(5話その14.jpg)

TIME:"2015-10-03 (土) 21:35:22"

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