プロヴァンス女公Matilda
夫・アラゴン王子Felipe
あなた、ちょっと相談があるのよ。
なんだい?珍しいじゃないか。
白髪もこれだけ増えるんだから、悩みもあるのよ。
白髪?それを言えば俺だって真っ白さ。
それもそうね。私たちも歳をとったわね。
……。相談っていうと、どうせ、相続のことだろう。
そうよ。まぁ、分かるわよね。
我々もいつ死んだって変じゃない歳になったからね。
普通に考えたら、私たちの跡継ぎはRudgerよね。
長男だからね。何か、不安気なようだが。
そうね。彼は……何というか……良く言って平凡だわ。
まぁ、そうだが、平凡であることが良いということもある。
そうかな。
どうせあれだろう。弟のGautierの方が跡取りに相応しいとでも思っているのだろう。
みんなそうよ。廷臣たちにも聞いてみなさいな。
Gautierは人気はあるけど、それだけじゃないか。
なによ。あなたはRudgerが跡を継ぐべきだと本気で思うの?
いや、冷静に考えなよ。具体的にどうやってGautierを立てるんだい?
「末子相続」を採用するのはどうかしら。
まさか、三男坊の存在を忘れているとは思わなかったよ。痴呆かなにかかな?
忘れた訳ではないわ。彼には……そうね。修道院にでも行ってもらうか……
どこの修道院に入れるんだい?具体的に言ってくれよ。
だったら死んでもらうほかないだろうね。
少し能力に秀でた次男に跡を継がせるために子殺しをするだなんて。
そういうのは存亡の危機に瀕した時に取っておくものさ。
でも、Rudgerに跡を継がせるのはだめ。絶対によ。
どうしてだい?
あの妻よ。前王朝の血を引いた娘。そればかりでないわ。彼女の兄が叛乱を起こしたのを忘れたの?
そんなにGautierがお好みなら、ドイツ人お得意の選挙制にでもしたらどうだい。
だめよ。そんなことしたら、外務相のToumasに全部かっ攫われるわ。あの人たらしにね。
Gautierの人望もその程度ということさ。
なによ。じゃあ、あなたはもっと良い跡取りを誰か知ってるの?
そうだな。Matildaは女のくせに、自分の子供は男子しかいないと思ってるのだから困ったもんだね。
だれ?あの長女*1?あれほどデキの悪い子は見た事ないわ。
フランス王がよく貰ってくれたっていまだって感心するくらいよ。
フランス王妃Matilda
まさか。
じゃあ、誰だっていうのよ!
人たらし、といったらToumasもそうだけど、あいつも大概だろう。
Bonaね!
夫には現皇帝の三男を婿入りさせているんだからまさに言う事もない。
今思うとどうしてあの縁談が成立したのか不思議よね*2。
皇帝の息子を婿入りさせた時点で後継は決まってるんだと思ったが……。
いいえ。たまたまよ。たまたま。
こうして(夫婦喧嘩の結果、)長女Bonaが後継であることが宣言された。
臣下たちは歓喜を以って新たなる当主を迎え入れた。
妹の一括相続に長男Rudgerや武勇を馳せた次男Gautierは不満を漏らしながらも渋々従ったと伝えられている。
この会談から約10年を経た1138年、Matilda Bosonidはその長い生涯に幕を閉じ、 その跡は娘のBonaが何の問題もなく継いだ。
Bona Bosonid(grey eminence) 外交26 戦術3 管理6 謀略4 学問4 Temperate Gregarious Zealous Kind Honest
外交以外の能力は平凡だが、外交はずば抜けて高いBonaです。Kind、Gregariousで封臣のOpinionに+15のボーナスがあることも見逃せません。
CK2には様々な相続制度が用意されています。プロヴァンス公のデフォルトの相続制度は分割相続で、過剰な分割相続の結果、ボソン家が埋没した歴史的経緯については以前の章で書いた通りです。相続法の変更には、現当主の治世が10年を超えている事、すべての封臣のopinionが0以上であること、領内で戦争が行われていない事などの条件が必要です。このため、相続法の変更はその場の状況だけではなく、先々の状況を見越して行う必要があります。
当主が保有する称号を子供たちで分割します。王国などが細分化されていく要因の最たるものですが、最高ランクの爵位をひとつのみ保有している場合は直轄領が減るだけで、国自体が相続により分断されてしまう事態は避けられます。現時点ではプロヴァンス公以外に公爵位を持っていませんので、国家が分裂する危険性はありませんが、今後、他の公爵号を獲得していくのであれば、いずれかの段階で分割相続を改めた方が良いでしょう。分割相続にも直轄領の最大数が増加するメリットがありますが、ただでさえ保有できる直轄領数に余裕のある現状では積極的に分割相続を採用する利点はありません。
選挙により後継者を選びます。選挙権があるのは当主と封臣たち(帝国の場合は王・公、王国の場合は公、公国の場合は伯に限定されます)です。注意するのは選挙権者はde jureの領域内の諸侯に限定されることです。被選挙権は領内の現当主の近親(兄弟と子女)と領内のすべての諸侯(帝国の場合は王・公、王国の場合は公、公国の場合は伯に限定されます)にあります。
同点の場合、当主の投票が優先されるようなので、選挙人の数が少ない場合、後継者を比較的自由に選定することができます。(たとえば公領を2つ含む王国で、公位のひとつを国王が兼ねているケースなどでは当主が無条件に後継者を自由選択できることになります。)封臣のopinionにボーナスがあるので国内は安定しやすく、婚姻関係から得られる同盟関係も自由選択できることを考えると対外的にも自由度が高いです(反面同盟関係が相続のたびに変更されやや煩雑です)。
能力、配偶者などの状況から最適な後継者を選べるメリットがある反面、王朝外の人物が当選し、国家全体を喪失してしまうリスクが伴います。諸侯の投票動態は複雑ですが、確実にいえることは、後継候補に対するopinionが重要な要素であることです。当主として投ずる1票は大きな影響力を持つ場合があります。
当主としてRudgerを推すと、外務相のToumasが過半数の票を集めるが、Bonaを推すと満場一致でBonaが選出された。
Bonaは女性の嫡出子だが、26と非常に高い外交スキルを持っており、外交スキル25のThommasを上回っている。
対して二人の息子はいずれも外交スキルは10未満で、選挙制では外交スキルの重要度が高いように思われる。
国の規模が相対的に大きくなるほど(たとえば、多数の伯領を含む公国、多数の公領を含む大帝国など)票のコントロールは困難になっていきます。今回の例でも、選挙制を採用してはみたものの、結局は長女のBonaを後継者に指名する方法しか取れず、自由な選択を可能にするという選挙制のメリットは活きていません。
最年長の子供が後継者となります。相続順位が早期に確定するところが最大のメリットです。相続に際して国家が分裂したり、称号が散逸する危険性は非常に少ないです。大きなデメリットはありませんが、逆に言えば特別なメリットもないです。今回は王権の権威(宗主国である神聖ローマ帝国の王権)が不足するため長子相続は採用できませんでした。
最年少の子供が後継者となります。長子相続と質的に同等の相続制度を王権の権威をhighまで上げないで導入できることが最大のメリットです。能力による選別は長子相続と比べれば容易です(長男を殺害するよりは嬰児殺しなどの方が比較的簡単なので)。問題点は、未成年の当主が誕生しやすいことで、摂政の横暴を許す危険性があります(摂政時は弱い請求権も有効になり、自由な外交も制限されるなど大きなディメリットがあります)。
王朝内の最年長の男子が相続します。意図的に版図外の人物に相続させるほとんど唯一の方法です。結果として、国家の版図の拡大が望めますが、後継者が高齢となりやすく短い治世から封臣のopinionにペナルティがついてしまい、国内が乱れる可能性があります。王朝が小規模の場合はそれなりにコントロールできますが、大規模な王朝で年長者相続を採用すると、高齢の当主が続き、認知症による摂政が乱立し、統治期間が10年に満たず、相続法の変更もままならないなど収集がつかなくなる場合もるでしょう。この場面では家族外の血族がいないため、長子相続の代替として利用できる可能性がありましたが、次代以降の継承を考えて採用していません。
国家規模が小さい場合(複数の王位、公位を持つ場合以外)は分割相続にメリット(直轄領を多く保有できる)があります。それをやや少し上回る規模では国家の分裂を防ぎつつ追加のメリットが得られる年長者相続や選挙制が、さらに大きい規模の国家では長子相続が適切だと思います。末子相続は長子相続の代用品と考えます。