イェルサレム王国のシビル王女とともに1180年からゲーム開始だ。 彼女はジャファとアスカロンの伯爵である(ゲームでは公爵級)。 彼女の弟であるハンセン氏病のボードワンがイェルサレム王だ。 この王国はとても小さいが、CK1の1187年スタートよりましである。 1187年スタートではさらに悪いことにギィ・ド・ルシニャンという暗君がいたことを思えば、なんでもないことだ。
さあ、現在のマップを確認しよう。
見て分かるように、イェルサレムは力強い封建諸侯たちに分割されているうえ、潜在的な敵国に完全に包囲されている。 北にはセルジュークトルコ、東と南にはアユヴィッド朝のエジプトがましましている。 はるか北西にはビザンツ帝国がいるが、支援は期待しない方がよさそうだ。 あらたな十字軍が地中海をわたってやってくるまで、諸外国の助けはないと見ていいだろう。
さて、王国のおもだったメンバーを紹介しよう。 現時点でイェルサレム王国の王権は非常に弱い。封臣たちは彼らの領域で好き勝手に振る舞える。 これは史実でも同じだ。
イェルサレム: 以前言及したように、イェルサレムはシビルの弟であるボードワン4世が支配している。彼はハンセン氏病で有名だね。 彼は親切で、凛々しく、賢明だ。しかし彼は十年ほど前から病気に罹っている。 彼は1174年に13歳のとき、王位に就いた。最近まで、摂政が彼を補佐していた。 病気を除けば、彼はとてもよい王だったと言えるだろう。 彼の宿敵サラディンでさえ、ボードワンの才能や勇気を尊敬していた。このことは重要だ。
しかし彼は長いこと生きられないだろうと予想された。そしてこのことは、近い将来継承問題が起こるだろうということを意味している。封臣たちはこの問題に目を光らせている。 封臣たちはいつも自分たちが継承問題にかこつけて権力を行使しようと陰謀を練っていた。シビルもまたこうした危険な状況下で、非常に危うい綱渡りをしなければならなくなる。 シビルは貴族たちを宥めるためにはたらき、他方で彼らをあまり有利にしないように注意を払った。
ジャファとアスカロン: シビルは自分の領地にパレスチナの宮廷をもっている。そこそこ裕福で、地中海貿易で利益をあげる港ももっている。 特筆すべき廷臣たちは、だいたいがみな、シビルの家族たちだ。
まず第一にボードワンとシビルの母であるアグネス・デ・コートニー。 彼女にまつわる悲しい物語がある。 彼女はエデッサ伯爵の娘だったが、エデッサ伯爵はムスリムの侵攻によって滅ぼされ、彼女はイェルサレムのアマルリク王子に強引に誘拐された。 アマルリク王子は彼女を妻として、二人の子供を産ませた。 ところがその頃、アマルリク王子の兄が死んで、王子が王位を継承した。王国の廷臣たちは王子とアグネスとの結婚をふいにした。 王子はマリア・コムネナという女と結婚することを約束してしまった。マリアはビザンツの皇女だった。 したがってアグネスは路頭に迷い、一族郎党、落ちぶれた。彼女は非常な苦痛を味わうことになった。
ではなぜこのシビルの母はそんなにも重要な政治的役割を担うことになったのか? なぜなら、彼女の前夫のあたらしい家族もまた公国に住んでいたからだ。 アルマリクの死後、マリア女王は「バリアン・イベリン」というペールシェヴァの騎士と婚約した。 バリアンはシビルの封臣の一人だった。彼は有能で忠実な廷臣だったが、マリアはコムネノス家の蛇で、陰謀と詐術の渦巻くビザンツ世界をもちこんだ。 もっと悪い問題は、彼女は自分の娘をアルマリク王に嫁がせたことだ。 このイェルサレムの「王女イザベラ」は、ボードワンとシビルの異父妹であった。 この女は継承問題のライバルというだけでなく、コムネノス家の問題でもあった!*1
ヨセリン・ド・コートニーについても言及しよう。彼はアグネスの兄だ。 彼は地主で、エデッサの宮廷からの落ち武者だ。 シビルは彼を家族のように扱うことで、彼の土地を簡単にのっとることができた。
騎士団たち: テンプル騎士団とホスピタル騎士団はイェルサレム王国の国境地帯に居住している。 ホスピタル騎士団は、イェルサレム王国の北方の国境にバールベクの宮廷と並んでみずからの城をかまえている。 その総長はロジァール・デ・モウリス。壮年で、やや怒りっぽい。
テンプル騎士団はイェルサレムの宮殿に司令部を置いている。聖地を守る砦なのだ。 その総長はサラディンに幽閉されている。次席総長はアルナウ・デ・トロヤという。
トリポリとティベリアス: イェルサレム王国でもっとも強大で影響力のある貴族は、トリポリ伯爵「レイモンド・ティベリアス」だ。 彼は如才なく有能だが、ペシミストで傲慢だ。 つい先日まで彼は若いボードワン4世の摂政を務めていた。そしてこのハンセン氏病の王がしかるべき年齢に達したあとでも、権力を容易には手放そうとはしなかった。 レイモンドは家来たちの信頼篤かったが、ひとたび彼を怒らすと非常に危険で、流血の事態になった。
トランスヨルダン: レイモンドより何を考えているか分からない唯一の封臣は、「レオナルド・デ・シャティヨン」である。 彼、もしくは彼の妻であるエティネイト・デ・ミレイはウホリス*2の請求権をもっている。 彼らが結婚する前、レオナルドはアンティオキアの王女と結婚しており(要するに彼は権力と贅沢を愛していたのだ)、エティネイトはトロンの貴族と結婚していた。エティネイトは子持ちだった。 レイモンドは浮気性で、暴力的で、権力に飢えていたことを覚えておいてくれたまえ。 彼はいつも領地の周辺にいたムスリムのキャラバンを襲撃して、現在までスルタン・サラディンの復讐の口実を与え続けてきた。 これはとてもとてもよくない事態だ。おー、それにレイモンドの継子*3は、シビルの異父妹の婚約者だ(!)。
アンティオキア: アンティオキアの王子、「吃音のボヘモンド」はイェルサレム王国から独立した称号をもっている。しかし事実上彼は王国に支援や援助をうけ、王国に従属している。 北のセルジュークトルコや東のアユヴィットに対して、彼の小さな領国はイェルサレムのちっぽけな付属物にすぎない。 彼と彼のいとこであるトリポリのレイモンドとの関係について記せば、レイモンドは彼のいとこであり、同盟者だ。
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1180: こうして陰険な封臣たちに囲まれて、若い王女シビルの最初の仕事はまともな配偶者を見つけるということだ。 ボードワン4世は長く生きることはできないと思われるので、封臣たちはシビルの配偶者がこの王国の新しい権力者になると予想することができる。 有能で、タフネスな夫がほしい。そしてこの夫は、封臣たちに侮られるような存在ではなく、もし彼らと一旦ことを構えることになったら、彼らを打ち倒すことさえできるような存在が望ましい。
わたしは完全無欠の候補者を必要としているわけではない。 いやいや、ギィ・ド・ルシニャンも御免だ。このフランク人貴族の次男坊には南フランスの宮廷で無為な日々をおくってもらうことにしよう。
さあ、では、アキテーヌに行こう。そこで我々はシビルの結婚相手としての一番の有望株を見出せるだろう。
リチャード・アンジューを紹介させてほしい。 彼はイングランド王の次男で、アキテーヌ公を継ぐ予定である。
ひとびとは彼を「獅子心」と呼ぶ。