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領主様、最近変わったよな・・・。
ああ、んだんだ。
何かこう、丸くなったような・・・。
いやーそれはねえべ・・・。
お城の侍女さしてる娘っこのおやぢから聞いだんだけどよぉ・・・。
領主さまのお部屋からここずうぅっと毎日、おっそろしい獣のような叫び声が聞こえてくるんだどよぉおお。
おおおお、おっがねぇな！！
やっぱ、悪魔にでもなっぢまったんぢゃねえが？
んだんだ。何か噂だと、弟君を毒キノコで殺したとか言っでだな。
あんなに仲良かった弟をフツー殺すかぁ？やっぱ悪魔だべ。
んでな、弟君のお墓には、その毒キノコがたっくさん生えてんだとよおぉ。
毒キノコォ？ほんにぃ？
ああ。そんでな、その毒キノコが生えた死体が埋葬された墓ってのはたいそう縁起が悪いんだってよ。
なんつっても、そのキノコが生えた代で家が滅びちまうってぐらいでさぁ。
いやー怖い怖い。あんの領主様のお家は代々夥しい人を殺してきたからねえ。いつかきっと天罰あたるわよ。
ハハハ。そうさそうにちげえねえ。アハハハハ。
・・・くそっ！
カンナエ城郊外。ルッジェーロの墓
また生えてる。叔父貴、やっぱりまだ親父のこと・・・。
イヤ・・・そんなことはない！親父に限ってそんなことは・・・。
ん？何だこのきったない棒きれ？ハッ！！コレって・・・。
12年前。
ルッジェーロのおじたん、こんどはぼくの攻撃ですぅ。
ははは、ボエモンはさすが兄者の息子だなぁ。
それぇい。あわわ・・・
おっと、大丈夫かい？そろそろ疲れたろ？剣の稽古はお終いだ。
ぼくもおじたんやパパみたいに強い戦士になりたいですぅ。
ん？ボエモンは戦士になりたいのか？
そですぅ。ボエモンは戦士になりたいですぅ。
ハハハ。戦士になるのかボエモンは！でもねボエモン、戦士も良いけど王様もなかなか良いと思うよ
おう・・・さま？
うん。王様。
王様って強いの？
うん。強いさ。戦士の中の戦士だよ。
戦士のなかの戦士。すごい！ぜったいになるボエモンなる！！
ハハハ。実はオレ、兄者、君のパパとこの国の王様になるって約束したんだ。
だからね、ボエモンが王様になるのは、君のパパ、そしてこのオレの後なんだよ
え～～なんでなんで。なんでぼくが三番目なの！
それは約束だからさ兄者との。兄者を王様にする！これがオレの夢。
そしてその王様のでっかい王冠を弟のオレに被せてやる。それが兄者の夢。
ルッジェーロのおじたん、約束してよ。
おじたんが王様になったら、ボクにもその王様っていう人のおうかん？被せてくれる？
ハハハハ。ボエモンは強欲だなぁ。まぁ、良いさ。必ずお前に譲ってやるよ。
ぜったい、ぜったいだよ・・・
叔父貴ぃ叔父貴ぃいいい・・・うぉおおお！！オレも親父も絶対に王様になる！なってやる！！
そしたらここにまた来るよ。来て、順番すっ飛ばした罰に叔父貴に被せてやる。王冠を絶対に！
ロベルトの長男・ボエモン。この年18歳。叔父ルッジェーロに鍛えられた剣技もさることながら、その卓越した統治能力で父の覇業を助けることとなる。
ただいま、親父。
おふ。倅よお帰り。ぬ？その汚い棒っきれはなんじゃ？
え？あ、コレ？コレは叔父貴に剣の稽古つけてもらってた時のヤツ。なんかお墓にあってさｗ
ふ～ん。あっそ。そんなモノより倅よちょっとコレ見てくれ。
ん？何だコレ。すっげーきれいな棒だな。宝石とかもいっぱい。コレどうしたの親父？戦利品？
ノンノン。コレはそんじょそこいらのモノぢゃねえよぉ。コイツはなぁ王笏っつうレガリアでなぁ、王の証なんだぜぇ。
ふ～ん。アレかよ親父。どっかの王様拉致って奪ったのかい？
ハハハ。ナニ言ってんだい倅よぉ。お前はルッジェーロに似て堅物だと思ってたけどよぉ、ちっとはマシなジョーク言えるようになったなぁ。
コレコレ。何か気づかない？頭の上のヤツ。
へっ？ん？あぁ？何その頭のキラキラした飾り。
それに着てるモン何かこう、ギラギラしてるっつうか・・・。
お前にまだ言ってなかったよなぁ。オレ様は今日から王様。シチリア王陛下であるぞいｗ
へええ。親父は今日から王様なんだぁ。王様かぁ・・・ってええええ！！！
おふ。
えっ・・・へ？・・・ほわぁ？
あ、アレだろ親父。王様になるってさ・・・何かこう、もっと胸アツな展開やイベントが発生してさぁ・・・感動的な場面が目白押しなんじゃねえの？
ほえ？いや何かさっき小包がローマから届いて、開けたらコイツ入ってたよ。ほれ、ローマ教皇からの手紙。
ロベルト卿、貴殿はフォースの暗黒面にどっぷり浸かっているので、余の片腕としてシチリア王位を授ける。さしあたってはこの金額を早急に振り込んでちょｗ
教皇より。
・・・・・・。
なんじゃそりゃあああああああ～～！！！
1076.08.22 ロベルト・イル・グイスカルド、シチリア王戴冠。初代国王ロベルト1世となる。
オートヴィル兄弟の悲願は、捕虜解放の身代金を教皇庁に貢ぐという、ごくごく平凡な手続きで達成された。 そこには、感動も感傷も何も存在しなかった。
