AAR/シーア派は砕けない

AAR/シーア派は砕けない

プロローグ 若き王の苦悩

西暦867年の某月某日。イドリース朝の現国王 YahyaⅡ世は悩んでいた。 彼が父より王位を相続して数年、王国は平穏であった。しかし今、その平和は破られようとしていたのだ。

&attachref(); イドリース朝スルタン・YahyaⅡ。外交以外は有能。

「陛下、Al-Qaism様より救援を求める使者が来ております。」 廷臣の報告に、Yahyaの苦悩はより強いものとなっていった。

アッバース朝が地方の統治を事実上放棄したことにより、イスラム世界は群雄割拠の様を呈していた。 アッバース帝国解体の波は、北アフリカの辺境の地にも押し寄せようとしていた。

「Al-Qaismは持ちこたえられそうか?」 「敵軍はおよそ10倍。持ちこたえるのは不可能かと…」

~Al-QaismはYahyaの跡取り息子である。この時、イドリース朝の盟下より脱しており独立公爵であった~

「小賢しきウマイヤの奴らめッ!!」 Yahyaは毒づく。

攻めてきているのはイベリアの雄・後ウマイヤ朝。イドリース家にとっては宿敵ともいえる間柄である。

平和を謳歌していたマウレタニアの地に突如として後ウマイヤ朝は介入してきた。 後ウマイヤ朝は今回の戦を聖戦と称していた。

「聖戦とはな…!まるで我がシーア派が異端とでも言うようではないか!!」

~イスラム教はスンニ派とシーア派の大きく2つの宗派に分かれる。当時、アッバース朝のカリフやウマイヤ家は主流派のスンニ派だった  のに対し、イドリス家は先祖・アリーの流れを汲むシーア派を信仰していた~

「援軍は送れぬ。ウマイヤとの全面戦争は避けるのだ。」 「ですが、このままではAl-Qaism様は…」 「何としても落ち延びさせるのだ!奴らも土地さえ手に入れば身柄までは求めまい」 Yahyaは自分自身に言い聞かせるように廷臣を諭す。 「ウマイヤ朝の真の目的はイドリース家の王国の征服だろう。挑発に乗ってはならぬ!!」

しかしこちにいくら戦う意思がなくても、息子を破ったウマイヤ軍が矛先を向けてくる可能性は十分ある。 Yahyaは内心戦々恐々としながらもそれをおくびには出さず、戦の準備を指示した。

しかし予想とは裏腹に、本来の目的を果たしたウマイヤ軍は即座に本国へと撤退していった。

「キリスト教勢力がウマイヤ軍主力の留守の隙をつき、攻め込んだようです」

密偵よりの報告にYahyaは胸をなでおろすと同時に、生き残りを懸けて決断しなければならない状況にため息をついた。

(何でよりにもよって俺の代なんだよ…)

Yahyaは青々と広がる天を恨まずにはいられなかった。


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